トランプ米大統領 中国公館追加閉鎖「あり得る」

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国務長官、知財窃盗非難
スパイ活動、FBIが捜査

 トランプ米大統領は22日、南部テキサス州ヒューストンの中国総領事館閉鎖を命令したことに関し、他の在米公館についても「常に可能性がある」と述べ、中国を牽制(けんせい)した。

 ヒューストンの総領事館で21日夜に火災が起きたことにも触れ「文書や紙を燃やしたのだろう」と述べ、中国が機密書類を焼却したことを示唆した。
(ワシントン・山崎洋介)

22日、米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(UPI)

22日、米ホワイトハウスで記者会見するトランプ大統領(UPI)

 ポンぺオ国務長官は訪問先のコペンハーゲンでの記者会見で、総領事館閉鎖について、中国による知的財産の窃盗が「今後も続くことは容認しない」と強調。その上で、「われわれは中国共産党がどう振る舞うべきかについて明確な考えを示した。もしそうしなければ、われわれの安全保障や経済、雇用を守るための措置を取る」と警告した。

 また、ビーガン国務副長官は上院外交委員会の公聴会で、中国による産業スパイや知的財産窃盗、外交官や記者に対する不平等な待遇、大学における研究成果の窃盗などを列挙。これらが総領事館閉鎖の要因になったとし、「総領事館の中国人外交官の行動は、外交の慣例と相いれない」と批判した。

 国務省のオルタガス報道官も声明を発表し、総領事館閉鎖について「米国の知的財産と個人情報を守るため」だと説明。中国が「米政府高官や米国民に対して米国全体で大規模かつ違法なスパイ活動や影響工作に従事している」と非難した。

 一方、共和党のルビオ上院議員はツイッターで「ヒューストンの中国総領事館は外交施設ではない。それは、中国共産党の巨大なスパイネットワークや影響工作の中心だ」と指摘。ルビオ氏はまたFOXビジネスのインタビューに対し、同総領事館は、ビジネスマンなどを工作員として用い、州議会のメンバーらに影響を及ぼそうとしていたと述べた。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、同紙はヒューストン総領事館に関連する連邦捜査局(FBI)捜査の概要を説明する7㌻の文書を入手。その内容には、周辺地域の機関から医学研究などの機密情報を違法に盗む試み、50人以上の研究者や教授らに研究データや情報を中国の機関に引き渡すよう説得する人材採用計画、亡命を希望していると中国政府が見なした中国国民の強制帰国などが含まれていたという。

 またNBCテレビは複数の米高官の話として、ヒューストンの総領事館が長年、中国政府による先端医療研究の窃盗や石油・天然ガス産業への浸透などの試みの拠点として使用されていたと報じた。FBIが長年情報収集を続けており、こうした懸念についてトランプ氏は就任直後から報告を受けてきたという。

 中国による知的財産窃盗をめぐっては、中国公安当局の指示を受けた中国人ハッカー2人が米企業などにサイバー攻撃を仕掛けて大量の情報を盗んだとして司法省が21日に起訴している。トランプ政権は、新型コロナウイルス拡散の責任や香港の自治侵害に加え中国のスパイ活動に対しても圧力を一段と強めており、米中間の緊張は今後さらに高まることが予想される。