米、あらゆる選択肢検討も イラン核兵器開発
イスラエル、UAEと3者会談
核合意再建協議再開へ
イスラエルとアラブ諸国が関係を正常化するために署名した「アブラハム合意」の1周年を祝い、米首都ワシントンで13日、ブリンケン米国務長官、イスラエルのラピド外相、アラブ首長国連邦(UAE)のアブドラ外相による3者会談が行われた。ラピド氏は共同記者会見で、イスラエルにはイランの核兵器開発を阻止するため必要ならばいつでも軍事力を行使する権利があると表明。一方のイランは、イスラエルの軍事的挑発を非難した。(エルサレム・森田貴裕)
ブリンケン氏は、3者会談後の共同記者会見で、核開発を進めるイランについて「この9カ月間、警告しながら様子を見てきたが、イランが2015年の核合意に戻るには、残り時間がなくなりつつある。米国は外交的な働き掛けを続けるが、イランが方針転換をしなければ、問題に対処するためあらゆる選択肢を検討する」と述べた。
ラピド氏は「イランはイスラエル国家を地上から殲滅(せんめつ)すると公言しているが、われわれはそれを許すつもりはない」「悪から世界を守るために国家が武力を行使しなければならないときがある」と表明した。「テロ国家が核兵器を持とうとしているならば、それを阻止しなければならない。国際社会は真剣なのだということをイランに悟らせなければ、イランは核兵器の開発競争に向かってしまうだろう」と述べた。
一方のイランは、国連安全保障理事会議長に宛てた書簡で、ラピド氏の発言は、平和利用のための核施設へのこれまでのテロが、イスラエルによる攻撃だということを証明しているとして、警告した。
米国のマレー・イラン担当特使は13日、「イランが15年の核合意に復帰する意向がない場合、米国はイランの核開発プログラムに対応するあらゆる選択肢を検討する用意がある」と述べた。また、米国とイスラエルはイランの核兵器開発に反対するという点で一致しており、イランの石油輸出を制限する米国の制裁措置を強化するとした。
イランの核開発をめぐっては15年7月、米国、英国、フランス、ドイツ、ロシア、中国の6カ国で、イランの核開発の大幅な制限と引き換えに、経済制裁を解除するとしたイラン核合意「包括的共同行動計画(JCPOA)」が成立した。しかし、トランプ米政権は18年5月、核合意には根本的な欠陥があり、イランの核開発の野心を止めることはできないなどとして一方的に離脱を表明。イランに対し経済制裁を再開した。これに反発したイランは20年1月、核合意の制限を超えて、保有するウランを無制限に濃縮すると宣言。核合意違反を続けている。
イラン核合意は、高濃縮ウランの核兵器転用を防ぐため、イランのウラン濃縮を3・67%までに制限している。しかし、イランは、ウラン濃縮度を高め、今年4月には濃縮度を60%以上にまで進展させた。さらに、イランのエスラミ原子力庁長官は10月9日、「濃縮度20%の高濃縮ウランの製造量が既に120㌔に達した」と国営テレビで発表した。国際原子力機関(IAEA)の5月の報告では、20%の高濃縮ウランの貯蔵量が62・8㌔となっており、9月には84・3㌔まで増加すると推定していた。
イラン核合意再建に向けて、米国とイラン間の仲介役を務める欧州連合(EU)欧州対外活動庁(EEAS)のモラ事務局次長は14日、イランの首都テヘランを訪れ、バゲリ外務次官と会談した。イラン外務省によると、バゲリ氏は「イランは常に、実質的な合意につながる真剣な交渉に臨む用意がある」と述べた。イラン外務省は、すぐに協議を再開する準備ができていると繰り返し述べているが、反米・保守強硬派のライシ師がイラン新大統領に選出された6月以降、核合意再建に向けた協議は中断されたままとなっている。
イランのファルス通信は17日、イラン核合意再建協議が21日に再開されると報じた。アブドラヒアン外相がイラン議員との会談で述べたという。
バイデン米政権が、外交交渉でイランの核兵器開発を阻止できなければ、単独でも阻止するとしているイスラエルは自衛のため、イラン核施設へ向けたサイバー攻撃を含め軍事力を行使する可能性がある。