中国による台湾侵略を阻め
日米は毅然たる態度示せ
台湾との交流深め絆構築を
最近日本のメディアは米中経済戦争、とりわけトランプ米大統領の保護主義的スタンスを批判的に報道している。まるでトランプ大統領の政策が時代に逆行しているかのようなニュアンスで伝えていることが気になる。確かにトランプ大統領の朝令暮改的で乱暴な政策全てを称賛することはできないが、彼が現在、必死にアメリカの超大国としての立場を堅持し、中国の世界制覇を阻止しようとしている面に関してはそれなりに評価すべきであろう。そもそも日本のメディアのように米中の争いを単なる経済戦争、貿易戦争と見ること自体、誤りであり、何事も経済優先で考える日本のメディアと社会が中国の本質を見失っているから発生している現象であるように思う。
アメリカの中央情報局(CIA)や国防総省(ペンタゴン)および連邦捜査局(FBI)など情報戦略に携わっている部署は「中国が合法、非合法、経済、政治、文芸などを透明、不透明性の中でアメリカに代わって世界のリーダーシップを奪おうとしている」という危機感を明確に打ち出している。そして中国の野望を実現するために「一帯一路」やアジアインフラ投資銀行(AIIB)を媒体として、特に世界の弱小な国々に対し飴(あめ)と鞭(むち)を使い分けながら、それらの国々をコントロールしようとしている。もちろん表面的にはこれらの国々の発展を促進し、開発を手助けすると言っているが、実際はこれらの弱小国の内政にまで干渉し、港や資源を奪い取ろうとしていることは徐々に各国が認識し、危機感を覚え始めている。
だが現段階においては、彼らを救済してくれる頼れる国家も強いリーダーも出現していない。中国は巧みに外交力と経済力を生かしてローマ法王庁まで抱き込み、かつてヨーロッパの民主化の時に、当時のローマ法王ヨハネ・パウロ2世が多大な支えとなって人々が立ち上がったことの再現が無いように手を打っている。
その一例が中南米のカトリックの国々による台湾との国交断絶で、その背景には中国の巧妙な外交戦略があり、成果を生み出していると言える。さらに本来ならば全人類に対して普遍的な課題である、人々の健康を守り、エイズウイルス(HIV)など国境を越えた対処など大きな役割を果たしてきた世界保健機関(WHO)からも台湾を排除させてしまった。
アメリカや日本などと国交を結んだ当時、中国は台湾を武力解放(侵略)しないという明確な公約をしたにもかかわらず、最近、中国政府は堂々と台湾侵攻を前提とした大規模な軍事演習をたびたび行っている。これは台湾の一般国民の恐怖感を増幅するのみならず、台湾への軍事侵略もあり得るということを世界に宣言しているようなものである。それに対し、中国の誠意を信じ、それまで台湾と深い関わりを持っていたアメリカや日本に対する約束を無視する行為であるにもかかわらず、日本とアメリカから強い反論ならびに批判が無いことは極めて残念なことである。
このような挑発的軍事行動に対して強い姿勢を示さないことを中国は彼らの行動を日本やアメリカが黙認していると都合よく解釈し、ますます図に乗ることは間違いないだろう。かつて中国のチベット侵略に対し毅然(きぜん)とした態度を示せなかったインドやイギリスなどと同じ過ちを日米が犯さないことを期待したい。日本の場合には憲法上の制約などもあり、軍事的に台湾を守り中国の侵略を阻止することはできないとしても、世論が無関心ではなく、台湾の独立と国民の幸せを守るということに明確な決意を示す必要があるだろう。それが究極的に日本自身の玄関先から安全と安定を守り、主権を守ることにつながるという認識を持ち、台湾との経済交流、文化交流あるいは戦略的な研究や、極端なことを言えば台湾を守るための志願者の募集まで行ってもおかしくは無いだろう。
現に中国政府は朝鮮戦争のとき、人民解放軍ではなく義勇兵として万単位の中国人軍人を送り込んでいる。また現在、報道によると約5000人の義勇兵をいつでも尖閣諸島に上陸できるよう待機させているという。もちろん彼らは自由意志で国を守るために愛国者としての集団を装っているが、かの中国ではそのような結社の自由も無ければ武装訓練などできるはずが無い。
台湾には民主的に選出された総統と政府、立法府それを支える国民が存在し、事実上の国家として機能しており、主権も存在している。台湾の未来を左右できるのはもちろん台湾人自身の選択と決意によるものでなければならない。だが、台湾を応援することは、日本はもとより、自由と民主主義を尊ぶ全ての国々が、人々の道義的責任であることを改めて認識し、同時に中国の覇権を東シナ海、南シナ海、インド太平洋で監視、牽制(けんせい)し、守らねばならない。
特に戦争を阻止しようという意思のある人間は、この問題について正確な認識を持ち、平和裏に台湾を守るため積極的に訪問し、経済的に貢献し、互いの歴史、文化などを学び、共通の利益を通して強い絆を構築することが急務であろう。日本が直面した未曽有の震災の際に台湾国民が多大な義援金と心からの連帯を表してくれたことも忘れてはならない。