コンゴ エボラ封じ込めで住民の不信感が障害に
隣国への拡大懸念
アフリカ中部コンゴ(旧ザイール)東部で流行しているエボラ出血熱は当初の勢いを失っているものの、感染地域は南へと移動し、隣国ルワンダへの拡大が懸念されている。政情不安に伴う治安の悪化や住民の政府への不信感などのため、治療活動に協力が得にくく、流行拡大阻止にも支障が出ている。
昨年ベニ、マンギナで流行し、過去2番目の被害を出したエボラは、南方のビュトンボ、カトワに移り、ルワンダ国境の町でも感染が拡大している。
世界保健機関(WHO)の緊急事態対応の責任者ピーター・サラマ氏は、スイスからの電話インタビューでワシントン・タイムズに対し、「ルワンダやウガンダへとつながる大市場都市ゴマで拡大が見られ、懸念している」と危機感をあらわにした。
ゴマは人口100万人以上、物資の輸送ルート上にあり、ここで拡大を止めることが重要になるという。
近年、治療や感染拡大防止のため、さまざまな設備が投入されている。WHOはコンゴとウガンダで新ワクチンの試用を開始し、すでに6万人に接種した。
しかし、地域の住民は、政府と反政府勢力との何十年にもわたる衝突で「心の痛手を負い」(サラマ氏)、受診や安全な埋葬方法を推める政府に対し強い不信感を抱いている。サラマ氏は「暴力、衝突と地元住民の不信感が重なり、活動が著しく困難になっている」と現地の困難な状況を訴えた。
ベニの治療センターは数週間前、大統領選挙戦中に襲撃され、カトワでは今も続く抗議行動のため生活が困窮、最近になって感染者が増加した。
すでに689人が感染、420人以上が死亡した。2014年の西アフリカでの流行で1万1000人以上が死亡して以来の規模となる。
国際医療団体「国境なき医師団(MSF)」は、ビュトンボの治療センターを拡大、カトワに新たなセンターを設置した。地元住民の信頼を得るため、大きな窓を設置したり、家族が訪問したりしやすくするなど工夫を凝らしているという。
カトワに滞在するMSFの人類学者ロバート・ライト氏は、「エボラに関しては、治療センターを設けるだけでは十分でない。地域社会と交流し、相互の信頼を築くことが大流行を止める鍵となる。住民が流行の抑制に積極的に関与できるよう、取り組みを強化する必要がある」と指摘した。
(ワシントン・タイムズ特約)