沖縄県民投票、政府は辺野古区と連携強めよ


 沖縄県で米軍普天間飛行場の移設先である名護市辺野古の埋め立てをめぐって賛否を問う県民投票が行われ、「反対」が多数を占めた。

 だが4割以上の人が棄権しており、投票結果を「県民総意」と捉えるわけにはいくまい。

普天間固定化に触れず

 そもそも県民投票には法的拘束力がない。外交・安全保障は政府の専管事項だ。わが国を取り巻く安保環境は一段と厳しさを増している。安保政策が投票結果に左右されれば、いったい誰が国民の生命・財産を守るのか。このことを改めて銘記しておきたい。

 沖縄で必要なのは普天間飛行場の危険性を除去し、安全保障を確固たるものにするという一点に尽きる。そのためには辺野古移設が不可欠だ。このことを政府は県民のみならず国民に丁寧に説くべきだ。

 想起すべきは地元・辺野古住民が補償などの条件付きで移設を容認していることだ。昨年12月、辺野古区行政委員会は「埋め立ての賛否だけを問うことは望ましくない」として県民投票反対を全会一致で決議している。辺野古区に現存するヘリパッドが代替施設の完成とともに返還され、地元の負担が軽減されるからだ。

 これまで辺野古区は県内外からの反対圧力にさらされてきた。座り込みを続ける反対派の大半は地元外の人だ。投票結果は反対運動を強める口実に使われるのは必至だ。それだけに移設工事を推進するに当たって足元を固めることが肝要だ。

 危惧されるのは補償をめぐって政府の方針が定まっていないことだ。これでは地元の支持を失いかねない。政府は腰を据えて補償や地域振興策を練るべきだ。辺野古区との連携を再構築するのが移設工事の最大の推進力になるはずだ。

 今回、投票率は50%台前半にとどまった。1996年の「日米地位協定の見直しと米軍基地の整理・縮小」を問う県民投票では59・5%だった。それよりも低かったのは、投票への疑問が消せなかったからだろう。

 当初、県政与党は「賛成」「反対」の2択で強行しようとした。だが、これでは普天間返還を願う複雑な県民感情をくみ取れないとして普天間の地元、宜野湾市や沖縄市など5市が反発し、投票協力を拒否した。それで投票推進派は急遽(きゅうきょ)、「どちらでもない」を加えて3択に修正し、全県下で実施された。

 しかし、それでも疑問が残った。宜野湾市議会は昨年12月に「普天間飛行場の固定化につながる最悪のシナリオに全く触れておらず、強い憤りを禁じ得ない」との反対意見書を採択している。3択でも「最悪のシナリオ」が抜け落ちており、疑問は解消されずじまいだった。

 県民投票条例は知事に広報活動などの中立性を求めている。しかし、玉城デニー知事は告示日直前まで「工事阻止」を唱え、中立性が問われた。公選法のような規制や罰則もなく、県民投票そのものの公平性が疑問視された。

毅然と移設工事進めよ

 政府は県民投票結果に惑わされず、毅然(きぜん)と移設工事を進めるべきだ。