後半国会、TPP承認と関連法案成立を


 後半国会の焦点となる環太平洋連携協定(TPP)の承認案と国内対策などを盛り込んだ関連法案が衆院で審議入りした。2月に環太平洋12カ国が署名したTPPは、発効すれば世界全体の国内総生産(GDP)の4割を占める一大経済圏を形成することになる。

 わが国はもちろん圏内各国の経済成長を後押しし、さらには世界経済にもプラス効果をもたらすが、承認は各国で産みの苦しみを伴うものだ。

 与野党が激しい攻防

 特に今年は日本と米国で選挙イヤーを迎えている。否応なしにTPPが争点に浮上しており、夏に参院選のあるわが国以上に、秋の大統領選を控えた米国においてTPPに対する批判は厳しいものがある。関税を撤廃する自由貿易を推進してきた米国で、大統領予備選における“トランプ現象”に典型的な保護主義的意見があることは注意しなければならない。

 12カ国全体のGDPのうち約60%を占める米国と、約17%のわが国のTPP発効に果たす役割は大きい。発効には2年以内に12カ国が批准するか、12カ国全体のGDPの85%以上を占める6カ国以上の批准が必要となるが、日米どちらが欠けてもできなくなる。

 現状では、発効を主導する役割は日本が担うことになろう。米連邦議会で少数与党のオバマ民主党政権よりも、まずは国会で安定多数の自民・公明の与党に支えられる安倍政権のリーダーシップへの期待が大きい。

 承認案は衆院を通過し参院に送付すれば30日後に自然成立するが、わが国が5月の伊勢志摩サミットでTPP発効への責任を果たし世界経済の牽引(けんいん)者として役割をアピールできることが望ましい。

 しかし、参院選の勝敗を占う1人区が地方であることから、農業をめぐる与野党の厳しい攻防が展開されている。秘密とされた協定交渉について石原伸晃経済再生担当相は「秘密保護に関する書簡で各国との具体的なやり取りは公表しないと決められている」と説明した。

 このような各国間の情報保護の取り決めを野党は逆手にとり、甘利明前経済再生担当相とフロマン米通商代表部(USTR)代表の交渉資料の提出を求め、タイトル以外は黒く塗りつぶされたA4版45㌻の文書を批判的に取り上げている。

 与党多数の前に野党の国会論戦も、このような選挙向けパフォーマンスに走りがちだが、批判をするだけでは解決にならない。安倍晋三首相はTPPにより「GDPを14兆円押し上げる効果が持続する」と表明しているが、経済成長を積極的な輸出型農業育成への投資や地方振興策につなげるべきだ。

 関連法案は畜産農家の赤字補填(ほてん)など支援策や著作権などに関する計11本の改正案をまとめた一括法案だが、民進党が主張するように生産減少額の政府試算が甘いとすれば、支援策の拡充もあり得よう。

 民進党は賛成すべきだ

 TPPは、民進党が民主党政権時代に「平成の開国」を標語にして推進した。承認案に賛成すべきだ。