近づく内閣改造 女性起用を好む安倍首相


 安倍首相は「女性好き」と言ったら天下の安倍ファンは目を剥くかも知れない。しかしウソではない本当だ。

 安倍内閣にはすでに2人の女性閣僚が任命されている。それだけではない。自民党三役のうち2人までが女性だ。内閣始まって以来の出来事だ。いままで三役のうち一役を女性が占めた例はある。しかし二役とは自民党開闢後の新記録だ。

 安倍首相は余程御婦人に執着しているらしい。選挙対策の上からも重要課題だ。

 こんどの場合も安倍首相は、女性起用をあらかじめ菅官房長官にちゃんと伝えている。別に驚くには及ばない。ところが続けて「但し2人だよ」にはびっくり仰天した。しかし首相の一言は重い。安倍人事はツルの一声で通った。

 安倍首相の殺し文句は「女性の活用」だ。党内でこの殺し文句に反対するものはいない。とくに官僚は大歓迎する傾向がある。性別にかかわらず官僚は何も知らない素人大臣が大好きだ。思うように動いてもらえるからだ。田中角栄元首相のジャジャ馬娘の真紀子氏が外相に選ばれたときも、周囲は目をパチクリさせたものだ。但し案の定、田中外相はあちこちでトラブルを起こし辞職を余儀なくされた。官僚のお守りも効果なしだった。

 このように女性閣僚は、場合によっては使い方が難しい。特に党の二役はいま注目のマトになっている。野田総務会長にしろ高市政調会長にせよ、世間は女だからといって容赦しない。ミスすればたちまち一刀両断だ。

 あれだけ女性を評価してきた安倍首相も、女性幹事長の実現には意欲に欠けている。万が一にも幹事長人事が失敗すると党は分裂騒ぎを免れない。さすがの安倍首相も女性幹事長に二の足を踏んでいるのはそのためかもしれない。

 同じことは内閣の官房長官にも言えよう。女性官房長官は海部内閣の森山官房長官だけだ。官房長官は首相の代理であり、人事と政策の総元締めだ。安倍首相の女性活用促進は結構だが、勇み足に注意しなくてはならない。いまのところその辺りの呼吸は安倍首相も心得ているからまず大丈夫だろう。

 安倍内閣は現在只今のところ安全地帯に立っている。支持率は上々、野党の内閣打倒の声も小さい。しかし6月の梅雨明けの頃から内閣改造が表面化する。少し待たせすぎたきらいがある。適材適所こそが大事であり、安倍首相の内閣改造では過度の女性閣僚は避けた方が賢明だ。(I)