国際社会で台湾を認め、支えよ

エルドリッヂ研究所代表、政治学博士 ロバート・D・エルドリッヂ

「統一」へ圧力強める中国
日米台3国間のFTA締結を

エルドリッヂ研究所代表-政治学博士-ロバート・D・エルドリッヂ

エルドリッヂ研究所代表-政治学博士-ロバート・D・エルドリッヂ

 中国・武漢で新型コロナウイルスの流行が始まってから半年が経った。世界で感染が拡大する間、台湾の感染者と死亡者は極めて少なかった。専門家による早い発覚と通知、同政府の素早い対応など、見習うべき成果が注目されてきた。

 だが、台湾は、中国の影響によって世界保健機関(WHO)などの国際機関への参加が拒否され続けており、国際社会において外交的、政治的に孤立している。その上、中国は、貿易や国際経済において、台湾の参加を極力、抑えようとしている。

欠かせぬ経済的な協力

 本稿では、今年1月に再選され、5月20日に2期目の任期が始まった蔡英文政権の台湾を、日本をはじめとする国際社会、とりわけ民主主義の国々はいかに守るべきかを論じることを目的にしている。

 台湾総統選は、大陸との緊密な関係を促進する対立候補者が完全に否定された結果となったが、中国からの圧力は終わったわけではない。これからの中国との戦いは本質的に国際的なものとなる。それゆえ、友好諸国の協力が不可欠となる。

 選挙前は広く報道されていたが、台湾統一を狙う中国は選挙に干渉しようとしたが、この行動は台湾の良心的な有権者に中国への強い警戒感、危機感を引き起こすという逆効果を招いてしまった。それでも、「核心的利益」とまで言う中国の台湾統一の方針は変わらない。中国が実際に何を行い、習近平国家主席がどのように実行するのかは見えてこないが、中国による圧力が今後も台湾にかかるのは確実だ。

 例えば、5月22日に行われた中国の全国人民代表大会(全人代)で、李克強首相は、政府活動報告のうち、台湾との「再統一」に触れた部分で「平和的」という文言を削除した。これは、政策変更を示唆したことを意味するのであれば、日米と台湾の連携が急務となる。

 もう一つの欠かせない連携は、経済的な協力だ。人口14億4000万人の中国にとって、2400万人弱の小さな島国である台湾を経済的に孤立させ、ダメージを与えることが、最も即効性がある方法となる。

 そうならないように、国際社会は、民主的で繁栄した国家であり、人権を尊重し、法の支配があり、言論と集会の自由があり、自由市場の規範を共有する台湾を国際社会の一員として認めるべきだと思う。要するに、国として承認すべきだ。

 それが難しいのであれば、せめて、自由貿易協定(FTA)を締結してほしい。特に、アメリカと台湾、日本と台湾、可能であれば3国間で締結するのが望ましい。

 台湾は、環太平洋連携協定(TPP)に参加したかったが、そのチャンスはあいにく与えられなかった。アメリカも結局入らなかった。TPPが締結する直前に台湾を訪問していた筆者は、残りの11カ国が台湾を招待することを期待していた。TPPは経済の側面は強いが、実は同時にこの地域の安全保障にとっても重要だ。つまり、誰がインド太平洋におけるルールを決めるのか、中国かそれ以外の国々なのか、ということだ。

 現在、台湾は、中国との両岸経済協力枠組み協定を含む約10カ国・地域とFTAまたは経済協力協定(ECA)を締結している。

 長年、台湾と日本は互いに主要な貿易相手である。2国間の経済連携協定(EPA)や本格的なFTAを求める声が上がっている。しかし、台湾は3月11日の東日本大震災に伴う福島第1原発事故の後、東北地方からの農産物の輸入を禁止し続けていることもあり、残念ながら具体的な動きはない。

 日本は既に世界中と18のEPAを締結しており、そのうち13はインド太平洋地域である。さらに四つは交渉中だ。台湾の市場の重要性と商品やサービスの高い質、それに中国のサプライチェーンやフェアトレード慣行に対する深刻な懸念を踏まえると、日本は台湾と貿易協定の合意を求めるのが妥当な選択だと考える。

 アメリカもインド太平洋地域で複数の2国間経済協定を結んでいる。台湾との関係を重視するトランプ政権は、11月の大統領選で再選されれば、台湾との協定を締結するだろう。

より多くの国が行動を

 アメリカや日本をはじめ、より多くの国々が台湾を助けることは、自分たちを助けるということを政治、外交、安全保障、そして経済的に早く理解して行動してほしい。