【社説】中国の歴史決議 習近平長期政権の幕開け
習近平長期政権の幕開けとも言える歴史決議だった。中国共産党の重要会議である6中総会(第19期中央委員会第6回総会)は、党創建100年を総括する歴史決議を採択し閉幕した。
歴史決議は1945年に毛沢東、81年に鄧小平の主導で採択された。今回の第3の歴史決議により習氏は、建国の父である毛、経済建設の母である鄧に並ぶ権威を手にした格好だ。
3期目の総書記続投狙う
その権威の宝刀を手に習氏が狙い定めているのは、来年後半に開く第20回党大会での異例の3期目となる総書記続投だ。のみならず、党内で超越した存在となる党主席ポスト復活の可能性も濃厚となってきた。
これから中南海では、習氏が絶対的王権にも似た強権を手にするための最終的権力闘争が始まる見込みだ。焦点となるのは李克強首相の後継候補だ。習氏とすれば手駒となる人物を副首相として滑り込ませ、来年の党大会で首相昇格に持ち込む必要がある。首相は副首相から選ばれるのが慣例となっている。
これまで首相候補は胡春華副首相とみられてきた。胡氏以外の3副首相は、来年の党大会で退職年齢に達する。ただ胡氏は党の青年組織、共産主義青年団(共青団)出身のホープで、習氏は胡錦濤前総書記が影響力を持つ共青団閥を警戒している。
一方、習氏側近である上海市トップの李強・上海市共産党委員会書記や広東省トップの李希・広東省党委書記が将来的に副首相に抜擢されるとの観測がある。李首相の後継にどちらかが就任すれば、習氏の強権統治への布石がさらに一つ打たれることになる。
しかし、絶対的強権は素早い政治的決定ができる表面的なメリットはあるものの、大局的にみると国家の活力を削ぎ落とし官僚統治機能を腐敗させてしまうデメリットが存在する。
今夏から中国各地で起きている停電は、2025年までに13・5%の省エネ目標を掲げている中国政府が、地方政府に省エネ目標を振り分けていることから発生した。毎年12月に評価を行い、翌年に結果を公表するため、地方政府は地場産業の致命的打撃や庶民の不便さを顧みず、自己保身のための実績を追求した側面があるからだ。
また、ワンマン体制確立は言論統制強化と表裏一体だ。習氏礼賛を繰り返す国営メディアの報道姿勢を見ると、権力をチェックするどころか権力の宣伝機関に堕している実態を目の当たりにする。何より中国の経済発展を牽引(けんいん)してきた民間企業への統制強化は、技術革新や新サービス開発などが停滞しかねず、経済的活力を削ぎ落とす不安材料となっている。
日本はリスクへの対応を
懸念されるのは、中国が台湾統一や沖縄県・尖閣諸島への野心を軍事力で満たそうとする安全保障リスクの高まりだ。
戦後、わが国は一度も戦火を交えることはなかったが、中国は朝鮮戦争やベトナム戦争に介入しただけでなく、インドや旧ソ連とも戦争の口火を切っている。わが国はこうしたチャイナリスクの増大に対応できる軍事力の増強や同盟関係の強化が求められる。