共産党の「連合政府」戦術 宮城県議会選挙で独走
民主敗北書かない「赤旗」
安全保障関連法成立と環太平洋連携協定(TPP)合意の後に行われた宮城県議会議員選挙(10月25日投開票)は、安倍政権の自民・公明の与党に対し、民主、共産、維新、社民など各野党が来年参院選に向けて選挙協力を模索する中で行われた初の県議選として注目された。結果は自民27議席で1減、公明4議席維持で与党は県議会過半数を維持(定数59)。野党は共産4議席増の8議席、民主2減の5議席、社民2減の1議席、維新は1議席、無所属は13議席だった。
日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(10・27)は「共産党倍増8議席/『国民連合政府』実現の声発信」「自民過半数割れ/政界に衝撃」の見出しでトップ報道し、同紙日曜版(11・1)でも、「共産倍増『連合政府』に期待」「勝手連次々/安倍政権に衝撃」の見出しでトップ報道した。
勝因について、「日本共産党は、『戦争法を廃止する国民連合政府の実現』『暮らしを応援する県政・県議会への刷新』を前面に訴えて、たたかいました。自民党は、国政の問題は関係ないと争点外しをたくらみ、公明党は『戦争法ではない平和安全法だ』と居直りましたが、こうした姿勢に厳しい審判が下りました」(10・27)として、安保法制反対と「連合政府」を挙げた。
また、マスコミが前回2011年選挙開票時の当選数からの増減で自民1減と報じたのに対し、同紙は「自民党は選挙前から4議席減らして27議席」と、追加公認を含む告示前の議席と比較することで「厳しい審判」の印象を強める書き方をした。
しかし、与党は自民・公明で過半数を超える31議席であり敗北ではない。安保法制やTPPに対する農政批判の逆風の中で踏みとどまっており、安保法制への「審判」とまでは言えないだろう。安保法制に同じく反対した民主、社民は敗退した。むしろ「政界に衝撃」なのは野党においてであり、政権批判票を共産党が集めて独り勝ちしたことだ。
ところが、「赤旗」には負けた民主について書かれていない。これまでの地方選なら、民主、維新はもちろん他野党に対して「オール与党」批判をするのが常だった。それが「連合政府」戦術で変わった。共産は他野党から“応援”してもらっているのだ。
宮城県議選で共産が巻いた法定ビラには「民主党岡田代表」、「生活の党小沢代表」が顔写真入りでエールを送っている。「連合政府」について「思い切った提案を頂いたことに、敬意を表します」とは岡田克也氏の言葉、「みんなが手を携えて選挙をたたかい、勝ち、政権を打ち立てようという目的に向かって自分も努力していきたい」とは小沢一郎氏の言葉。ビラの上では保守系だった岡田氏や小沢氏が共産に票を投じるよう有権者の背中を押している。
民主党内の戸惑いをよそに既成事実化に共産は独走しているが、今後も「連合政府」戦術を加速させ、相づちを打った他党系の人々をどんどん党媒体に登場させることで「普通の野党」を振る舞うだろう。
解説室長 窪田 伸雄






