最優先すべき待機児童解消

秋山 昭八

弁護士 秋山 昭八

低い日本の女性就業率
復職後押しする取り組みも

 日本の女性就業率(15歳以上)は、最近急激に増加したとはいえ、いまだ5割弱で、主要7カ国(G7)でイタリア、フランスに次いで低い。一方、男性就業率(同)は7割弱でG7で首位を占めている。

 政府は人口が減少する中、労働力として女性の活用を進めたい意向で、働きやすい法制度や託児所の充実に加え、職場復帰へのハードルを下げる多様な取り組みが求められている。

 日本の2016年の女性就業者数は約2800万人で、前年比47万人増えている。年代別の女性労働力率が育児期に下降する日本特有の「M字カーブ」の特徴は、育児休業などの浸透により近年緩和されたものの、女性を活用する一段の取り組みは欠かせない。

 22年ぶりの低失業率に、有効求人倍率は43年ぶりの高水準である。戦後2番目の長さになった今の景気回復は、21世紀初めにあった「73カ月」を抜き、最長になるとの見方が定着してきた。このような人手不足に、育児や配偶者の転勤などで退職した女性の復職を目指す動きが広がってきた。

 日本マイクロソフト株式会社は、復帰への準備期間となるように約半年の有給インターンシップを新設する。勤務日数や時間帯を参加者が自ら決めて、無理なく働き始められるようにする制度で、半年間の準備期間を設けることで体力、精神両面での負担を減らし、再就職を後押しする制度と言えよう。

 インターン期間中は月額25万円ないし45万円程度を支払い、インターン終了後、能力を査定して採否を決める制度で、情報技術人材のほか金融や自動車など顧客となる業界に詳しい人材を獲得する考えで、年5~10人程度、数年間で計数十人を雇用し、主力であるクラウド事業の戦力を底上げしたい考えだ。

 出産や夫の転勤で離職した女性は、長く続く子育てのため退社前と同じ労働時間を確保しにくく、復職を諦めざるを得ないケースが多かったが、近年、日本の企業では在宅勤務や時短といった多様な働き方改革が広がり、残業時間も減っており、復職しやすい環境が整いつつあり、各社は他に先んじて優秀な人材の確保を目指している。

 損害保険ジャパン日本興亜株式会社は、退職時に近い役職で復職できるよう制度を変え、子育て中の女性など労働市場に出てこない埋もれた人材を掘り起こす制度をとっており、昇進面で配慮して総合職の復職を後押しする。家庭の事情で退職した元社員が再入社する場合、退職前と同じ役職または一つ下位に就けるようにしたもので、元社員の再雇用制度を整える企業が増えているが、役職が下がるのが一般的なため、採用の際の競争力が増すとみている。

 再雇用の条件変更も相次いでおり、大成建設株式会社は、このほど大幅に要件を緩和し、転職や事由不明の場合以外は再雇用を認めることにしたもので、不妊治療での退職者らに門戸が広がったと言える。

 第一生命保険株式会社も、退職後「10年以内」としてきた復帰条件を17年4月から「15年以内」にし、明治安田生命保険相互会社も、総合職の「7年以内」を「10年以内」に延長する等、各社は女性を対象に復職の制度を整えている。男性は転職による離職が多いが、女性はライフステージの変化でやむなく辞めるケースが多い。

 地方にも、育児などが一段落した優秀な人材が埋もれているとみられる。

 政府は、「人づくり革命」の総合対策を閣議決定したが、3~5歳児の幼児教育・保育の無償化を看板に掲げているが、最優先すべきは待機児童の解消である。

 保育サービスの拡充は多様な人材の就労を後押しし、日本の経済成長を下支えする。働きながら産み育てやすい環境が整えば、出生率が上向く効果も期待でき、少子高齢化に直面する日本にとって待機児童解消は喫緊の課題である。

 認可、認可外にかかわらず、民間の力を生かして質の高い保育サービスを増やすことが欠かせない。

(あきやま・しょうはち)