「常に学び、価値ある教師」を目指す
北海道師範塾「教師の道」が冬季講座を開催
人口減少に伴って今、教育界が変わろうとしている。これまで閉鎖的だといわれた学校は「より開かれた学校」を合言葉に地域や家庭と積極的に関わろうとしている。一方、地域社会もまた、学校を街づくりの拠点として捉え、実りある連携を探っている。こうした中で北海道師範塾「教師の道」(塾頭・吉田洋一氏)は、教師のあるべき姿、教育の質向上を目指し、毎年定期講座を開催している。(札幌支局・湯朝 肇)
今回初めてグループワークを導入
「私は物事、特に難しい問題を考える時、いつも“鳥の目”“虫の目”“魚の目”の視点で捉えるようにしている」。こう語るのは、北海道教育庁学校教育局指導担当局の岸小夜子局長。1月7,8日の2日間、札幌市内のホテルで開かれた北海道師範塾「教師の道」主催の冬季講座で講師に招かれた同指導局長は、現場の教師および教師を目指す若者を前に、現在置かれている教育の現場や改訂される学習指導要領のポイントなどについて話をした。
岸指導局長の言う“目”とはこうだ。すなわち、広い視野で物事全体を見詰める俯瞰(ふかん)的大局的な見方としての“鳥の目”。現場、現物、現実と向き合う複眼的な目としての“虫の目”、時代の変化や流れを見極める目としての“魚の目”を持つべきだというもの。
とりわけ、平成30年度からは幼稚園、小学校(32年度)、中学校(33年度)と“新しい学習指導要領”が実施される。
そうした節目の時は、なおさら時代の流れを見る目が必要になるのだが、岸指導局長は「平成10年の学習指導要領から『生きる力』の育成が謳(うた)われるようになった。この流れは変わっていないが、より学びの質を高めることが望まれている。つまり、これまでの暗記再生型から思考発信型の教育を施すことになる」と語り、グローバル化が進み社会が著しく変化する中で自ら考え取り組んでいけるような人材を育成することが求められていると強調する。
ところで、北海道師範塾「教師の道」は平成22年9月に発足した。北海道内の現役教師や大学教授らが集まり、教師を目指す学生や若者たちの夢を実現するための養成講座を開設している。とりわけ、夏・冬休みを利用して定期講座をボランティアで開催しているが、時宜にかなった教育テーマを取り上げ、講演と同時に若手教員採用による実践報告を通して互いに議論を深めている。
今回の実践報告では、同塾の養成講座を受講して教員採用試験に合格し現在、北見市立南小学校で教鞭(きょうべん)を執っている佐藤はるか教諭が「お互いを認め合えるクラスを目指して」と題する実践発表を行った。
佐藤教諭は、「私は小学校の低学年を受け持っているのですが、正義感からなのか友達の言動で気になるところがあればすぐに言い付けに来る児童が多いのです。最初、私は名前が挙がった児童を呼んで話を聞き、悪いところがあれば考えさせて謝罪させるという対応を取っていたのですが、トラブルは減ることはありませんでした。そこでどうしたらよいかを真剣に考えました」と語る。
同教諭が取った方法は次のようなものだった。それは友達の良いところを見つけたら、それを紙に書いて入れる「サンキューボックス」、また児童一人ひとりが困っていることを紙に書いて入れる「ハッピーボックス」の設置であった。この方法によって「それまで言い付けられていた児童は、1学期は良いところが2個、2学期では6、7個に上り、次第に数は増えていった。今では言い付けられることはほとんどなくなった」(佐藤教諭)という。
一方、ハッピーボックスでは、友達の悩みに気付いたり、自分の悩みとして考えられるようになってきたとも。さらに話し合いの場ではその問題に対して各児童が自分の意見や考えをクラスメートに伝える能力も上がっていったという。佐藤教諭は「最初に比べて成果は出ていると思いますが、マンネリ化に陥らないように今後も工夫していきたい」と話す。
冬季講座では、今回初めて「授業のユニバーサルデザイン化」をテーマにしたグループワークを導入した。吉田塾頭は、「参加者が単に人の話を聞いているだけでなく、自分の意見を持ち、それを発表することで考え方を磨き、さらに勉強してもらえるような環境をつくっていきたい」と語る。「教師魂を磨き、常に学び、価値ある教師を目指す」ことを目標として掲げる同塾の取り組みは、教師を目指す若者や若手教師には確実に刺激を与えるものになっている。