教育委員会制度改革の課題

秋山 昭八(社)全国教育問題国民会議理事長 秋山 昭八

国民の信頼を裏切るな

地方公共団体の責任明確に

 学校で起こった問題に教育委員会が適切に対応できない状況が続く中で、教育委員会制度改革論議が始まった。

 自民党の教育委員会改革に関する小委員会は、教育委員会改革の目的は、教育の政治的中立性、継続性・安定性を確保しつつ、次の各点についての改善を図ることにあるとしている。

 ①責任の明確化(委員長と教育長のどちらが責任者であるかわかりにくい)

 ②迅速な危機管理対応

 ③首長の意向の反映

 ④国との関係(国が地方の法令違反等の場合に最終的な責任を果たせるようにする)

 地方自治の精神を尊重しつつ、いじめの隠ぺいなど、地方教育行政において、法令に違反し、あるいは児童生徒の「教育を受ける権利」を著しく侵害するおそれのある場合、公教育の最終責任者たる国(文部科学大臣)が責任を果たせるようにする。

 そして改革案として、

 ①首長は、議会の同意を得て新「教育長」を直接任命・罷免する。

 地方公共団体に首長が主宰する総合教育施策会議(仮称)を設置し、首長のリーダーシップの下に教育行政の大綱的な方針を定めるとともに、首長が積極的に関与して重要な教育施策の方針を協議し、調整する場とする。その方針に基づいて、教育委員会が教育行政を執行する。法令違反や学校事故発生時の対応及び事後対応が必要な場合などには、首長が教育委員会に対して、措置要求を行えることとする。

 ②教育委員会は、政治的中立性、継続性・安定性を確保するため執行機関とする。総合教育施策会議において、首長は教育委員会と協議して大綱的な方針の策定等を行うものとする。教育委員会は、会議で策定した方針に基づいて教育行政を執行する。

 ③教育長と教育委員長を一本化した新たな責任者(新「教育長」)を置くこととし、首長が議会の同意を得て直接任命・罷免する。「教育委員長=教育長」とすることで、新「教育長」が、迅速かつ的確に教育委員会の会議の開催や審議すべき事項を判断することができる。

 ④法令違反等の場合であって、教育を受ける権利が侵害されていることが明らかな場合以外の場合においても対応できるよう、地教行法第49条(是正の要求)を見直す。児童生徒の生命又は身体の保護のため、いじめによる自殺等の防止だけでなく、再発防止の措置を講じさせる必要がある場合にも対応できるよう、地教行法第50条(是正の指示)を見直すとしている。

 一方、中央教育審議会は平成25年12月13日次のような答申をしている。

 昭和31年制定された「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」は、旧教育委員会法の様々な問題点を整理し、今日まで57年間続いてきた現在の教育委員会制度の骨格を形成した重要な法律であり、教育の政治的中立性、継続性・安定性の確保を制度的に担保してきた。しかしながら、深い思慮の下に設計されたこの制度には、一つの重要な課題をはらみつつも、関係者の善意と協力によって維持されてきたという側面があることも事実である。その課題とは、責任の所在の不明確さである。この課題は、今日、児童、生徒の生命・身体や教育を受ける権利を脅かすような重大な事案が生じる中で顕在化し、地方教育行政に対する国民の信頼を維持するためには、制度の抜本的な改革が不可欠な状況となっている。

 昨年4月15日に、内閣総理大臣が開催する教育再生実行会議においてまとめられた「教育委員会制度等の在り方について(第2次提言)」においては、「合議制の執行機関である教育委員会、その代表者である委員長、事務の統括者である教育長の間での責任の所在の不明確さ、教育委員会の審議等の形骸化、危機管理能力の不足」といった課題が指摘され、地方教育行政の責任者を教育長とすることを柱とする改革が提言された。

 先に示された責任の所在の不明確さ、審議の形骸化、危機管理能力の不足といった教育委員会の課題の原因となっていると考えられ、こうした課題を解決するためには、教育委員会制度の抜本的な改革を行う必要がある。

 地方教育行政の第一義的な責任は地方公共団体にあり、まずは地方公共団体が必要な取組を行うことを前提としつつ、児童、生徒の生命・身体や教育を受ける権利が侵害されたりする場合には、国がしっかりと公教育の最終責任を果たせるようにすることが必要であり、その権限を明確にするための方策を検討する必要がある。

(あきやま・しょうはち)