緊張続く教育現場 「第6波」に備え予防教育に工夫


「正しく知って 正しく恐れる」
新聞・動画、クイズ形式の授業

 新規感染者が激減する一方、新しい変異株「オミクロン株」が今年、猛威を振るう可能性があり、教育現場は緊張が続く。文部科学省は「第6波」を警戒しながら、インフルエンザなど既存の感染症にも対応する必要があるため、各地方自治体の教育委員会宛てに、幼小中高・特別支援学校に関する情報をガイドラインとして発信している。

 各教育委員会はそれに基づき、日常の感染予防や新規感染者が急増した場合に備えて、「正しく知って 正しく恐れる」「うつらない うさない」ことを動画で伝えるなど、さまざまな工夫を凝らしている。

きちんとマスク、あいさつは小さな声で、距離を確保と子供たちに分かりやすい動画を作成した(磐田市教育委員会作成の動画から)

きちんとマスク、あいさつは小さな声で、距離を確保と子供たちに分かりやすい動画を作成した(磐田市教育委員会作成の動画から)

 文科省のガイドラインは「手洗い・消毒」「マスク着用」「換気」「3密を避ける」「健康観察」を感染対策の基本とし、学校だけでなく家庭でも実行してほしいことを細かく示している。これを受けて、各自治体の教育委員会は幼児・児童・生徒の健康管理と学びの保障、学校関係者、保護者、そして学校に関わる地域住民に至るまでの感染予防策を分かりやすく伝えている。

 静岡県磐田市教育委員会は文科省のガイドラインに従い、教師を児童・生徒に見立てて動画を作成した。「うつらない」「うつさない」ための五つのポイントとして「手をしっかり洗い、手で顔をさわらない」「マスクをシッカリ着ける、アゴマスクをしない」「こんにちはのあいさつも小さな声で、手話も取り入れて」「手の触れない距離を保つ」「机の間隔を広く保つ」など、低学年でも理解できるように、動画を利用している。

 各学校は「学校通信」などで家庭に伝えるのは、登校前の検温をはじめとした体調管理だけではない。コロナ対策で休校が長引くことで生活リズムが乱れることを挙げ、それが不登校要因になるとともに、学習意欲の低下につながることを指摘。子供が意欲をもって登校できるようにする環境づくり、生活リズムの維持が必要だと伝えている。

 兵庫県では、新聞の切り抜きをNIE(新聞を教材として活用する活動)に生かす活動が盛んだ。県立伊川谷高校や西宮市立浜脇中学校などは、新聞を切り抜きして意見発表に使っている。最近は感染者の拡大、ワクチン情報のウソ・ホントなど、「正しく知って 正しく恐れる」をテーマに、新聞を通して正しい知識・判断を身に付けることを推奨している。こうした活動は同県だけでなく、各地の学校でも行われている。

 埼玉県秩父市立南小学校では養護教諭が全クラスを回り、正しい感染予防をクイズ形式で学ぶ「コロナ対策授業」を行った。「毎朝、学校で検温して熱があるかどうかチェックする 〇か×か」の正解は「×」で、「自宅で朝晩検温しましょう」と説明。楽しみながら新型コロナウイルスへの対応を学んでいる。

 また、授業では会話やくしゃみでウイルスが飛ぶ距離を考えたり、布マスクと不織布マスクの違いなどを学んだ。一昨年も同様の授業を行ったが、息苦しくなるとマスクを外す児童がいたが、新型コロナウイルスを“正しく学び、正しく恐れる”授業が浸透したことで、昨年は給食時以外にマスクを外す児童はほとんど見られなくなったという。

 学校関係者はコロナ対策に万全を期している。しかし、教室内の清掃・消毒、児童・生徒の健康観察と、業務が増えるので、通常の業務だけでも“過労死レベル”と言われる勤務状況では、限界がある。

 このため、教職員でなくてもできる清掃・消毒、そして通学時に密状態を避けるための指導などは、PTAや地域住民に任せている学校もある。コロナ禍においては、常日頃から築いた地域住民、学校・教職員OB、PTAなど信頼関係が生かされる。

教育部長 太田 和宏