動物飼育の中止への懸念
世話することで育つ心
地域で預かるシステム模索
コロナ禍で長期休学やリモート授業が増える一方で、児童・生徒と教師の間で「分かる楽しさ、知る喜び」の感動の共有が減っている。その代表的な例は、動物飼育を通じた“情操教育”。インターネットを介在した画像や動画によって知識は効率的に得られるが、動物を「愛でる心」は実際に触れ合い、世話をすることでしか育たず、学校での動物飼育の中止に懸念が広がっている。
「これからの学校教育は、ますますデジタル化が進むだろう。しかし、映像や動画を通じて得た知識で何でも知った気になってしまうことを危惧する。動物飼育は子供の問題解決能力を育むことに適し、優しさや思いやりの心を育むことができる。動物の“生老病死”を通して動物の尊厳も理解できる」
昨年夏行われた全国学校飼育動物研究大会「『飼ってよかった』と実感する動物飼育」で、全国学校飼育動物研究会の鳩貝太郎会長はこう語り、コロナ禍を理由に動物飼育をやめることに懸念を表明した。
一方、大手前大学(兵庫県西宮市)の中島由佳教授(心理学)は、動物飼育を行っている小学校275校を対象に、コロナ禍で臨時休校になった期間における動物飼育について、アンケート調査を行った。その結果から、学校と保護者は動物からの感染と、世話係の児童が「密」になることによる感染拡大を心配していることが分かった。
中島教授は「家庭や動物園で飼っている動物から人間にうつった例はない。他国で飼育員からライオン、トラにうつった例はある。動物飼育に関係している獣医師が保護者・教職員・地域住民に対して丁寧な説明をする必要がある」と強調した。
そして、「長期休校時に、獣医師や畜産農家などが動物を預かるシステムがあれば、利用したいという要望が多数あった。動物にとって幸せな飼育環境、教職員の負担軽減、子供たちの成長を地域の有志・学校・獣医師・PTAなどが協力して飼ってよかったと思える動物飼育の形を形成していきたい」と述べた。
東京都教育委員会から動物飼育推進校の指定を受けている中野区立白桜小学校の林禎久校長は「生活科でモルモットの飼育活動を行っている。抱き方が悪ければ怒った鳴き声を出す。餌が十分にあり、可愛がってもらえる時はキューキューと嬉しそうな声を出す。モノ言わぬ動物の世話をすることは苦労も多く、生老病死にも出合う。それを超えて、思いやりの心、動物を愛でる心のほか、子供たちの責任感を育てることができる」と、子供の心を育む上で動物飼育は欠かせないと訴えた。