逆境でこそ「魂」が目覚める


未来に向け改革のチャンス

マスク姿で距離を保ちながら初詣をする参拝客=2021年1月4日、東京都千代田区の神田明神(森啓造撮影)

マスク姿で距離を保ちながら初詣をする参拝客=2021年1月4日、東京都千代田区の神田明神(森啓造撮影)

 日本国内で、新型コロナウイルスの初めての感染者が出てから、まもなく2年になる。当初、このパンデミックがこれだけ長く続くと予想した人は少なかったはずだ。

 年末には、新しい変異株「オミクロン株」が出現し、今年は国内でも猛威を振るうとの警戒感が高まっている。そればかりか、新たな変異株が出る可能性もあり、マスク生活をはじめとした「ウィズコロナ」の非日常はしばらく続く。

 長期化するコロナ禍は、多くの人に苦悩をもたらした悲劇である。しかし、逆境に直面した時、「禍(わざわい)を転じて福と為す」のごとくに、ちょっと視点を変えれば「福」を見いだすことができるものだ。実際、テレワーク実施企業が増えるなど、働き方から生き方までさまざまな分野で変化が生まれている。

提灯型パーテーションに包まれて、マスクなしで会食が楽しめるサービスが登場した=東京都千代田区の日本旅館「星のや東京」(同旅館提供)

提灯型パーテーションに包まれて、マスクなしで会食が楽しめるサービスが登場した=東京都千代田区の日本旅館「星のや東京」(同旅館提供)

 「逆境っていうのは、自分の魂を目覚めさせてくれるもの」――。童話劇『青い鳥』の作者で、ベルギーの劇作家モーリス・メーテルリンク(ノーベル賞受賞者)の言葉だ。ウィズコロナは、世界の人々が等しく直面する逆境だが、そこに向き合う姿勢次第では、自らの魂を目覚めさせ、ぶれない人生を送るための力を身に付ける好機にすることもできよう。

 内閣府は昨年11月、コロナ禍における生活意識と行動の変化に関する調査結果を公表した。それによると、18歳未満の子を持つ親に対して、感染拡大前と比較し、家族と過ごす時間の変化を質問したところ、5割が「増加した」と答えた。さらに、その層のうち「家族と過ごす時間を保ちたい」と答えた人は6割に達している。

コロナ禍でフロントの受付案内をする恐竜ロボットが脚光を浴びている=千葉県浦安市の「変なホテル舞浜東京ベイ」(H.I.S.ホテルホ-ルディングス提供)

コロナ禍でフロントの受付案内をする恐竜ロボットが脚光を浴びている=千葉県浦安市の「変なホテル舞浜東京ベイ」(H.I.S.ホテルホ-ルディングス提供)

 また、20歳代の若者に、結婚への関心について質問すると、35%がコロナ禍前よりも「高くなった」と答えた。「3密」を回避する中で孤独・孤立を感じて、人と人のつながりの大切さに気付いたのかもしれない。このほか、東京23区に住む20歳代の半数は地方移住への関心を高めているという。

 この調査に表れた家族、結婚、地方についての日本人の意識の変化がそのまま、ほころびが激しい家族の絆、人口減少の要因となっている非婚化、そして都市部への一極集中の改善につながると期待するのは早計だが、コロナ禍で生まれた覚醒の兆しを見逃してはならないだろう。

 ウィズコロナ時代は日本の未来に向けた正念場である。