米ニューヨーク市 感染の波の間に戻る活気


ワクチン 無料検査が普及

 新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の感染拡大に伴い、イベント中止などの動きが再び起きている。しかし、ウィズコロナ時代はアルファ株、デルタ株、目下のオミクロン株など新型株感染の波を何度も乗り越えながら、人々が希望を失わず前向きに生きることが大事なのではないか。

 一昨年に新型コロナによる打撃を受け、ゴーストタウン化したとまで言われた米東部ニューヨーク市。それを乗り越え、活気を取り戻していた同市を昨年12月上旬に訪れた。
(ニューヨーク・山崎洋介)

百貨店メーシーズ本店前に設置された無料の新型コロナウイルス検査所

百貨店メーシーズ本店前に設置された無料の新型コロナウイルス検査所

 マンハッタンの繁華街「タイムズスクエア」は、写真撮影する観光客やダンスを披露するパフォーマーらが集い、新型コロナ前と変わらない賑わいを見せていた。中でもこの地を代表するブロードウェーミュージカルの格安チケットを販売する「TIKS(チケッツ)」の前には100人以上が列をなしていた。

 ブロードウェー公演は、新型コロナによる休演から、昨年9月に約1年半ぶりに再開。チケットを買ったばかりのシカゴから来たジュリア・ポーさん(24)は、この2日前に再開後はじめてブロードウェー公演を観劇したといい、「人生のありがたみを感じるような体験ができたの。皆が公演を観(み)られるようになったのは、本当に素晴らしい」と目を輝かせた。

 筆者はその夜、「オペラ座の怪人」を観に行ったが、劇場前は、ワクチン証明などのチェックを待つ人で列ができた。筆者は、スマホに撮影したワクチン証明を提示。係員は、それを指で拡大し、身分証明書の名前と一致しているかしっかり確認した。

 座席は間隔を開けておらず、ほぼ満席。ただ、公演前や休憩時間にスタッフがマスクの着用を求める看板をもって巡回し、注意を喚起していた。

 公演は、俳優の熱演に観客は拍手や声援で応え、最後のカーテンコールには多くの人が立ち上がって喝采を送った。観客がマスクをしている以外は、従来と変わらない盛り上がりだった。

 劇場街にある老舗レストラン「ジュニアズ」の受付カウンター前では、土曜日午前8時過ぎから、ワクチン証明書を提示するため約20人が列をつくった。ほぼ満席の店内にはガヤガヤとした話し声が響き、店員が忙しそうに動き回っていた。

写真撮影する観光客らで賑わったタイムズスクエア

写真撮影する観光客らで賑わったタイムズスクエア

 カウンター席を担当していたウエートレスに客足について尋ねると、「劇場が再開した直後は少し戻った程度だったけど、今ではコロナ前と同じくらいね」と笑みを見せた。

 店の外で知人が出てくるのを待っていたテキサス州から来たという初老の男性に飲食店でのワクチン義務化について尋ねると、「とても良いことだ」と評価。感染リスクについては「ほとんどないと思う。私はブースターショットも受けたからね」と安心して食事ができた様子だった。

 市中心部の至る所で目にしたのが、テントを用いた新型コロナの無料検査所だ。気軽にできることから、観光客を含め多くの人が利用していた。

 筆者も試したが、その場でタブレットを使って名前やメールアドレスを登録した後、スタッフが鼻に綿棒を入れて検体を採取。そのわずか約3時間後には陰性結果がメールで届いた。

 クリスマスシーズンだったこの時期、クリスマスツリーで有名なロックフェラーセンター周辺は、ごった返していた。スマホでツリーの写真を撮っていたロス・アルバさん(72)は、ニューヨーク市で生まれ育ったが、今はフロリダ州に住む。しかし、毎年欠かさずツリーを見に来ているという。

 同市の復活ぶりについて「以前は、通りには誰もいなかったのよ。でも、そこから徐々に復活してきた。パンデミックが続いているから、まだ完全ではないけどね」と新型コロナを懸念しつつも、活気を取り戻したことを喜んだ。