中国経済はどうなっていて、何が起きているのか
中国政府は人気女優の巨額脱税を摘発したり、アイドル養成番組の放送を禁じたりして、芸能界に対する締め付けを強化しているという。拡大した経済格差を是正する「共同富裕」を目標とするからだ(小紙9月5日付)。
中国経済はどうなっていて、何が起きているのかは、われわれには分かりにくい。若手作家、郝景芳(ハオジンファン)さんの小説『1984年に生まれて』(中央公論新社)は、この国で起きていることを教えてくれる良書だ。
1984年は資本主義が始動した年で、都市、港が解放され、銀行と企業の改革が始まった。作者はその年に生まれた。物語はフィクションだが自叙伝の形式を取り、祖父、父、自分と3世代にわたる。
祖父は銀行家で人民の裏切り者として吊(つる)し上げに逢(あ)い、工場で働く父は外国企業と提携するために深圳に出掛けるが、体制と摩擦を起こして出国。主人公は大学を出て北京の統計局に入る。
専門訓練を受けるが、知りたかったのはデータがどうごまかされ、改変されるかの仕組みだ。が、挫折する。経済評論家、田中直毅さんは『中国大停滞』(日本経済新聞出版社)の中で、データ改変について詳述している。
「中国においては統計の作成、運用を定めた統計法が存在していない」ため「数値に実情が反映しない」。国務院各局への回答データは、徴税にも賄賂の補助材料にも使われる、という疑心暗鬼が回答者側にあるという。これが政府と国民の関係なのだ。