「高リスク研究」支援か 米NIH 武漢への助成資料公開


米国立衛生研究所

米国立衛生研究所

 米国立衛生研究所(NIH)による中国・武漢ウイルス研究所(WIV)への研究助成に関する文書が7日までに、米メディアによる情報公開請求により公開された。専門家からは、ウイルスの感染性や病原性を人為的に高める機能獲得研究が行われていたことが明確になったとの声も上がり、新型コロナウイルスの起源となった可能性が指摘されるWIVにおける同研究への支援を否定してきた国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長の主張に改めて疑問が投げ掛けられている。

 NIHは2014年から、SARS(重症急性呼吸器症候群)のようなコロナウイルスが再発するリスクを研究する目的で、米ニューヨークを拠点とする非営利団体エコヘルス・アライアンスに資金提供。昨年トランプ前政権によって停止されるまでエコヘルスを通してNIHからWIVに約60万㌦の資金が流れた。

 今回、米ニュースサイト「インターセプト」のNIHに対する情報公開請求により、エコヘルスによる助成金申請書や研究内容についての更新情報など約900㌻の文書が公開された。

 この文書について分析したラトガース大学の分子生物学者、リチャード・エブライト教授はツイッターで、「実験によって新たに作られたSARS系コロナウイルスが、元のウイルスよりも、ヒト化マウス(細胞・組織の一部を人間の物に置き換えたマウス)に対して病原性が高いことを明らかにした」などとして、NIHの資金によりウイルスの病原性を高める実験が行われていたことが明確になったと指摘。その上で、NIH傘下の国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長らが、「WIVにおける機能獲得研究やパンデミックを生む可能性のある病原体の増強を支援していないと主張しているのは、事実でない」と主張した。

 また、新型コロナの起源を調査している非営利団体USライト・トゥ・ノウのエグゼクティブディレクター、ゲイリー・ラスキン氏はインターセプトに対し、文書で示された実験内容について「これは、今起きているパンデミック(世界的感染拡大)につながった可能性があるハイリスクな研究の計画だ」と指摘した。

 ファウチ氏は議会証言で、WIVにおける機能獲得実験への資金提供を強く否定してきた。これについて、共和党のランド・ポール上院議員は7月、ファウチ氏が議会に嘘(うそ)をついたと非難した。

 今回の文書公開を受け、ポール氏はツイッターで、「私はすでにファウチ氏による偽証について調査するよう求めた。今回の報道によって、ファウチ氏が責任を問われるべきであることが十分に明確になるはずだ」と訴えた。

 他の共和党議員もファウチ氏に対する追及姿勢を強めており、ジョシュ・ホーリー上院議員は「ファウチ氏は繰り返し、意図的に議会や米国民を欺いてきた。辞任し、議会調査に直面すべきだ」と訴えた。

(ワシントン・山崎洋介)