ボルトン米大統領補佐官、中露のサイバー攻撃に対抗策

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はホワイトハウスで行った記者(ビル・ガーツ)とのインタビューで、中国が依然、軍備増強と経済の近代化に必要な知的財産を狙って、米国の政府、民間部門へのサイバー攻撃を続けていると主張。国外からの攻撃への新たな対抗策に取り掛かっていることを明らかにした。

 ボルトン氏によると、トランプ大統領は昨年、サイバー攻撃への対応で軍と情報機関の権限を強化し、抑止力を高めるため、新たな「国家安全保障大統領令13(NSPM13)」に署名した。オバマ前大統領は2012年12月、大統領令で国外からのサイバー攻撃への対応を指示していたが、実行の際に、大統領や外国政府の承認を求め、現場の権限が限定されていたため、それに代わるものとして新たな大統領令を出したという。

 ボルトン氏はこの大統領令を出したことについて、中国のサイバー攻撃が続いていることが一因だと指摘、「攻撃的サイバー作戦の監視・承認手順が大幅に変わった」と手続きの簡素化を強調した。

 最初に実行されたのは、昨年11月の中間選挙前。サイバー軍が、過去に偽情報、選挙干渉に関わったロシアのグループに攻撃を仕掛けた。

ボルトン氏

ボルトン氏

 ボルトン氏は「ロシアによる選挙干渉の阻止に実際に効果があったものと思っている」と述べるとともに、オバマ政権時の「受け身の姿勢」で米国は弱体化したが、「時間はかかるものの、サイバー空間での抑止力確立への取り組みが始まった」と、外国からの攻撃阻止に期待を表明した。

 米情報機関はこれまで、ロシアと中国のハッカーグループが米国の送電網に侵入したことを確認しているが、これは、紛争時に送電網を停止させるための偵察とみられている。

 ニューヨーク・タイムズが今月中旬報じたところによると、米サイバー軍は警告として、ロシアの送電網への侵入回数を増加させた。

 米国が5月、中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)を米国市場から事実上締め出す決定を下したことについては、「(ファーウェイなどの中国企業は)人民解放軍や国家機関の支配を受けており、資本主義の企業ではない。米国は自由市場の原則を放棄しない」と訴えた上で「その脅威と危険性に気付くのが遅過ぎた」と過去の政権の対応を非難した。

 ボルトン氏は、27、28両日の20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)で行われる米中首脳会談で貿易交渉が焦点となっていることについて、「中国は圧力を受け、取引を望んでいると大統領は考えている。中国は経済の大きな構造改革が必要だ」と強調、中国による知的財産の窃取、強制的な技術移転の停止を改めて求めた。