最新SLBM実験、中国が米を「威嚇」
極超音速兵器を搭載か
中国は最新の長距離潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪3(JL3)」の発射実験を行った。シャナハン米国防長官代行が前日にシンガポールの「アジア安全保障会議」で南シナ海での中国の活動を非難しており、米牽制(けんせい)を狙ったものとみられている。
実験が行われたのは今月2日、中国の軍事専門サイト「新浪軍事」は、発射実験で極超音速滑空飛翔体の実験も行われたと報じた。極超音速飛翔体は、高速で飛行する誘導可能な弾頭で、米ミサイルの防衛網を突破するために開発されているとみられている。
巨浪3の開発は、新型の地上発射戦略ミサイル、爆撃機、潜水艦発射ミサイルなど中国の核戦力増強の一環であり、国防総省によると、中国はすでに、巨浪3の後継となるミサイルの計画に取り掛かっている。
中国はこれまでにも、米高官の中国訪問中に兵器実験を行って米国を牽制したことがある。2011年1月、当時のゲーツ国防長官の訪問中に、新型ステルス戦闘機「殲20」の最初の試験飛行を行った。ゲーツ氏は回顧録で、1人の側近が殲20の試験飛行を「これ以上ないほどの侮辱」と主張したと記している。
新浪軍事は、実験で極超音速飛翔体を使用したのは、中国当局がこの新兵器を「部分的に公表」したかったからだろうと指摘した。
国際評価戦略センター上級研究員のリチャード・フィッシャー氏は、中国の宣伝機関であるメディアは、飛行実験の巨浪3以外の部分を強調したかったようだと分析。アジア安全保障会議に合わせて行われたのは「台湾と米国に対する威嚇」だと指摘した。
同氏によると、巨浪3の発射実験はこれが2度目。「露骨な核ミサイルによる威嚇」であり、「(中国は)短期的にはインド太平洋地域での覇権、最終的、長期的には全世界での優位性の確立を追求している」と指摘した国防総省の新インド太平洋戦略の指摘を裏付けていると強調した。
国防当局者は「巨浪3は、20年代に建造が始まるとみられている新型の096型(弾道ミサイル潜水艦)に搭載される」と指摘した。
巨浪3についての詳細はまだ知られていないが、個体燃料を使い、中国が唯一、配備している核搭載SLBM「巨浪2」の後継となる。
中国の軍事専門家が17年に中国メディアに明らかにしたところによると、巨浪3は新型の移動式大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風41」を基に造られ、核による報復攻撃能力確保の一環として開発されている。
科学技術委員会、国防科学技術工業委員会、中国科学院が設立した「科技日報」によると、巨浪3の能力は、ロシアの新型SLBM、ブラバと同等で、米国の最新のトライデント2D5より優れているという。