中国、来年中に衛星破壊レーザー配備

ビル・ガーツ

 

 中国軍は2020年、低軌道上の人工衛星を破壊可能なレーザー兵器を配備する可能性がある。米国防総省の国防情報局(DIA)が明らかにした。米情報機関が、中国のレーザー衛星破壊兵器(ASAT)の配備計画の詳細を明らかにするのは初めて。

 中国は、地上配備のASAT、ジャマー(電波妨害装置)、サイバー攻撃、小型衛星など数多くの宇宙兵器を保有しており、レーザー兵器はその一部。有事に米国への攻撃でこれらの兵器を使用する計画だ。

 DIAは報告で「中国は、人工衛星とセンサーを破壊、妨害するためのレーザー兵器の開発を進めているとみられる」と指摘。「20年までに、低軌道上の衛星のセンサーを攻撃できる地上配備レーザー兵器を配備するとみられ、20年代の半ばから終わりにかけて、衛星の構造にまで被害を及ぼし得る高出力のシステムを配備する可能性がある」ことを明らかにした。

 中国のレーザーASATの存在は06年から知られ、軌道上の米衛星に地上からレーザーを照射して「目をくらませた」ことがある。その翌年には、気象衛星をミサイルで破壊し、スペースデブリ(宇宙ごみ)を飛散させ、国際的な非難を受けた。

 中国は有事の際に、高出力のレーザー兵器を使って、米国の精密誘導ミサイルに使用される全地球測位システム(GPS)を混乱させる計画を持っている。

 低出力のレーザーで、衛星の光学センサーを妨害したり、一時的に機能しなくしたりすることが可能で、ミサイルの発射を検知する早期警戒衛星の赤外線センサーや偵察衛星を一時的に無力化することもできる。

 中国は、120基以上の軍事衛星を保有。その中には世界初の量子通信衛星も含まれ、量子状態のデータをレーザー光で送ることで、解読が不可能な通信が可能になっている。

 また中国は宇宙に関する国際法をめぐっても、米国封じ込めを図っている。

 中国はロシアとともに08年、ジュネーブ軍縮会議で「宇宙空間における兵器配置防止条約案(PPWT)」を提示、宇宙の軍事利用に反対する姿勢を示した。

 シンクタンク、宇宙法・政策ソリューションズのマイケル・リスナー所長はこれについて、米国の宇宙での能力を制限するための「ローフェア(法を武器とした戦争)」との見方を示した。

 ロシアは、航空機搭載レーザーASATを保有しているとみられ、報告は、宇宙軍に「ASATとみられる」レーザー兵器が引き渡されたことを指摘している。

 米国は弾道ミサイル迎撃用の航空機搭載レーザー兵器の開発、試験を実施していたが、オバマ政権時の11年に計画は中止された。

 報告は「中露は今後も、宇宙を近代戦勝利のために不可欠な領域とみている」と指摘したうえで、「今後も宇宙での自由な活動に脅威となるシステムを開発し、宇宙で活動する能力、宇宙対抗能力の強化を進めていく」と中露の軍事的な宇宙進出に対抗する必要性を訴えている。