ベネズエラ危機、キューバ情報機関が軍に浸透

ビル・ガーツ

 

 米南方軍のフォーラー司令官(海軍大将)は、危機的状況が続くベネズエラ問題でキューバ治安要員が「中心的位置」を占め、中露も、経済、軍事面でマドゥロ独裁政権を支援していると非難した。

 フォーラー氏は7日の上院軍事委員会で、ベネズエラ国内にはキューバ軍・情報機関の要員2万5000人が駐在し、マドゥロ左派政権を支援、ベネズエラ軍の上層部をコントロールしていると強調した。

 また「(キューバの警察と治安機関が)マドゥロ大統領周辺の治安を担っており、情報機関の奥深くに入り込んでいる。…マドゥロ政権にとって依然、中心的位置を占めている」とキューバがマドゥロ大統領の体制維持に大きく貢献していることを明らかにした。

 フォーラー氏は、ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)がキューバの影響下のベネズエラを「キューバズエラ」と揶揄(やゆ)したことについて「その通りだ」と述べた。

 ロシアと中国も依然、マドゥロ政権を支援しており、中国は約620億㌦を融資、ロシアは融資と投資というかたちで170億㌦を供給している。マドゥロ政権が崩壊すれば、両国ともこれらの資金を失うことになる。

 フォーラー氏は、中国がベネズエラでサイバー攻撃を行っていると指摘、詳細は避けながらも、「民主的な結果には全く貢献しない」と批判した。

 また同氏は、米政府が、ベネズエラ国内のロシアなどからの外国人治安要員を監視していると強調、「ロシアの治安部隊が空路、ベネズエラ入りしているという報告を受けている。…軍だけでなく、各省庁間で協力し注視している」と述べた。

 フォーラー氏は証言の準備書面で、ロシア、中国、イラン、キューバ、ニカラグア、ベネズエラの6カ国が中南米で米国にとって脅威になっていると指摘した。ロシアは昨年末、2機の核搭載可能な戦略爆撃機Tu160をベネズエラに派遣したが、これはマドゥロ政権を支援し、米国を牽制(けんせい)するためだ。

 ベネズエラ軍には2000人の将官がおり、北大西洋条約機構(NATO)全体よりも多い。フォーラー氏は、「そのほとんどは、薬物の違法取引や不正取引によってマドゥロ政権が得た資金から給与を受け取っており、それを元に軍からの忠誠と保護を得ている」とマドゥロ政権の腐敗ぶりを指摘。「ロシアとキューバは、ベネズエラの独裁化に手を貸している。…キューバは60年間にわたって冷酷な独裁体制を敷いてきた。マドゥロ氏は、そのキューバ政府の助言に従い、情報機関の支援を受けることで、独裁体制を維持している」と非難した。