米海軍潜水艦の保守点検に遅れ、稼働できず

ビル・ガーツ

 米議会付属の政府監査院(GAO)の調査によって、海軍は、潜水艦の保守点検の大部分を予定通りに実施することができず、運用に遅れが生じたり、予算超過になったりしていることが明らかになった。11月に公表された報告によると「GAOが海軍の保守点検資料を分析した結果、2008年度から18年度の間、攻撃型潜水艦の遊休時間、造船所の出入りの遅れによる保守点検の遅れは1万363時間」に上った。

 一例を挙げると、原子力潜水艦ボイシは、13年に保守点検を行う予定だったが、造船所側の作業の遅れによって予定通りに開始できなかった。16年になっても通常の運用ができず、2年以上にわたって、造船所に入ることができないまま、埠頭で待機していた。

 GAOによると、海軍は08年度以降、「作戦能力のない」攻撃型潜水艦の維持のために15億ドルを費やした。造船所に入るのを待っている間や、造船所での保守点検作業の遅れによって発生した費用だ。報告は、海軍の51隻の潜水艦について調査している。ロサンゼルス級33隻、シーウルフ級3隻、バージニア級15隻だ。これらの潜水艦は、情報収集のための極秘作戦、敵標的の攻撃、特殊部隊の輸送に従事しており、軍にとって欠くことのできない能力を備えている。

 GAOによると、海軍は造船所の問題に取り組み始めているものの、「国有、民間の造船所で保守点検時間を効率よく割り振ることで、攻撃型潜水艦の遊休時間を最短にできる可能性があるが、できていない」。

 調査は、国有造船所の稼働時間はこの数年間、超過しており、そのために「攻撃型潜水艦の保守点検はさらに遅れ、遊休時間も増えている」と指摘、「この困難な課題に取り組まなければ、海軍は今後も、作戦行動のできない攻撃型潜水艦の維持、乗組員への手当などを支出し続けることになる」と警告している。

 GAOは、事業の分析を行い、国有・民間造船所での保守点検作業の分担を改善するよう海軍に求めた。