中国、米政権批判本を積極報道

ビル・ガーツ

 中国政府のプロパガンダメディアが、トランプ米大統領を批判したワシントン・ポスト記者、ボブ・ウッドワード氏の新著「フィアー(恐怖)」を積極的に取り上げている。内容の一部が公表されると、その2日後の6日には、中央テレビ(CCTV)などの主要国営メディアが大々的に報じた。

 同書は、錯乱しているとトランプ氏を嘲笑し、反大統領の陰謀を企てたり、政策を妨害したりするなど、高官による反乱が起きている主張している。

 CCTVは、ウェブサイト上に5本の記事を掲載、トランプ氏のこの本に対する反応を報じた。

 CCTVの別の記事では、「ウォーターゲート記者の新著にトランプ氏が怒り」とタイトルが付けられ、国営新華社通信は、ホワイトハウスはこの本に対する怒りで「揺れている」と報じた。中国共産党機関紙・人民日報も同様にホワイトハウス内に恐怖が満ち、トランプ氏が激しく怒っていると指摘した。8日には6500万人の視聴者を持つとされる国際放送CCTV4が、2本のニュースを流した。別のプロパガンダテレビ、CCTV13もこの本について報じた。

 中国共産党系のチャイナ・デーリーは5日に、この本は「まさにホワイトハウスの宮廷ドラマであり、トランプ氏は『火消し』のために7回もツイートせざるをえなかった」と伝えた。

 中国の検索大手「百度(バイドゥ)」の検索トラフィック分析の専門家は、「フィアー」の検索が9月初旬に急増したことを明らかにした。どの報道でも、同書の表紙が使われている。

 報道の焦点は、トランプ氏の統治スタイルが原因でホワイトハウス内に混乱と機能不全が起きていることを同書が明らかにしたということだ。

 どのような意図からこのような報道をしているのかは、どの報道でも少なくとも一度は、ニクソン大統領を辞任に追いやった1970年代のウォーターゲート事件に関するウッドワード氏の調査報道に言及していることから明らかだ。中国国営メディアは最近までトランプ氏批判を避けてきたが、関税をめぐる貿易戦争が激化して以降、反トランプ・プロパガンダを強化している。

 中国は11月の中間選挙で民主党を勝利させ、トランプ氏の基盤を弱体化させようとしているとみられている。下院で民主党が過半数を獲得し、弾劾手続きに取り掛かることを期待しているからだ。

 トランプ氏は、中国の習近平国家主席への批判を避け、何度も友人だと言ってきた。しかし最近では、北朝鮮の非核化交渉を邪魔しているとして中国を激しく非難している。