学生に流行っているドラマ ー台湾から


 ある食事会で台湾大学の学生たちと同席したときのこと。最近流行(はや)っているものに話題が及ぶと「国際橋牌社というドラマが学生たちの間で大流行しているのを知っていますか」という。「国際橋牌社」とは台湾で制作された政治ドラマで、李登輝元総統が進めた一連の台湾の民主化を描いた作品だ。

台北市の自宅で世界日報のインタビューに応える李登輝元総統=2017年6月12日、加藤玲和撮影


 
 実をいうと、私はこのドラマを見たことがない。というのも、1話60分が10話で完結する大作だ。時間がかかるので、関心はあったものの手が出せずにいたのだ。

 それにしても、こんなシリアスな政治ドラマがなぜ大学生の間で流行っているのだろうか。

 学生たちの話はこうだった。今年に入り、国際社会で台湾海峡の平和と安全が注目された。日米はもちろんのこと、世界の多くの国々から「台湾の民主を支持する」という発言が聞かれた。

 1996年に行われた総統直接選挙を民主化の完成だとすれば、現在20歳前後の大学生たちにとって、民主化の過程は教科書で学んだり、大人たちから聞いて知っているにすぎない。

 にわかに世界中から注目されている台湾の「民主」とはなんだろうか。「民主化の父」と呼ばれる李登輝はどんな人なのか。どうやって民主化を実現させたのだろうか。

 こうした疑問を手っ取り早く解決してくれるのが、ドラマ「国際橋牌社」だったのである。感想をぶつけ合い、台湾の民主について議論を始めた学生たちを前に「まだ見ていない」とは最後まで言えずじまいだった。