強まる武漢研究所流出説 、米国務省が新たな報告書

ビル・ガーツ氏

ビル・ガーツ氏

 米国務省は政権交代直前の今月中旬、中国の武漢ウイルス研究所(WIV)が新型コロナウイルスの発生源である可能性を示す新たな証拠を盛り込んだ報告書を公表した。WIVと中国軍が協力して、極秘研究を行っていた可能性についても指摘した。

 報告によると、WIVで2019年秋に複数の職員が新型コロナに似た症状を示していた。中国・武漢で新型コロナの感染が最初に公表されたのは同年12月だが、中国当局は職員の発症を発表していない。

 報告は「過去にも研究所での事故による感染が、中国やその他の国での感染拡大を招く事例が起きている。04年に北京で発生したSARS(重症急性呼吸器症候群)がその一例だ」と指摘、「WIVの上級研究員、石正麗氏は、WIVでは新型コロナやSARS関連ウイルスへの感染者は出ていないと主張しているが、これは疑わしい」としている。

 医師で陸軍感染症研究所の生物兵器専門家だったロバート・ダーリング氏は、「自然発生とは考えられない」とした上で、「誰かが実験の成果物に感染したのだと思う」と、WIV内での感染の可能性を指摘。国土安全保障省の元医官ウィリアム・ラング氏も、報告について「WIVとの関連を示す非常に強い状況証拠だ」と述べた。

 報告は「どこで、いつ、どのようにして、最初に人に感染したかを正確に」特定することはできていないとした上で、最も可能性が高い感染源として、感染した動物との接触と「武漢の研究所での事故」の二つを挙げている。

 報告はまた、WIVと中国軍との関係についても触れ、17年以降、WIVで極秘の研究が行われてきたと指摘。「WIVは民間研究機関と称しているが、米国はWIVが中国軍と研究発表や極秘プロジェクトで協力していると判断した」としている。

 その上で「新型コロナの起源について信頼できる調査を実施するには、武漢の研究施設への完全かつ透明な立ち入り検査が必要」と主張し、研究者への聞き取り調査や職員の健康記録の調査が必要だと訴えている。

 米国に亡命し、新型コロナは人の手が加えられた生物兵器と主張してきた中国のウイルス学者、閻麗夢氏は、この報告から中国政府が新型コロナの起源について「最初からうそをついていた」ことは明らかだと主張。報告によって、新型コロナの「元となる」ウイルスは15年~17年の間に中国軍が発見したものであり、「ウイルスの機能獲得過程で人を想定した動物実験が行われた」ことが明らかになったと指摘した。

 また、一昨年秋に新型コロナに似た症状を示したWIV職員について、「新型コロナのもとになった株、またはそれと類似の株に感染していたかどうかを調査することが重要だ」と強調した。


ビル・ガーツ氏
米紙ワシントン・タイムズ(WT)の国防担当記者として、これまでにスクープ記事を多数執筆。2019年11月まで米保守系ニュースサイト、ワシントン・フリー・ビーコンの上級エディター。著書に『Deceiving the Sky(空を欺く)-地球的覇権狙う共産中国、活動の内幕』(Encounter Books)、『誰がテポドン開発を許したか』(文藝春秋社刊)など