香港の次は台湾、米補佐官が警鐘

防衛力強化呼び掛け

ビル・ガーツ

 

 国家安全維持法(国安法)の施行など中国による香港への統制強化を受けて、次は台湾が標的となるのではないかと懸念している――オブライエン米大統領補佐官(国家安全保障担当)はワシントン・タイムズとのインタビューで、中国の台湾への侵攻の可能性を強調、防衛力の強化を呼び掛けた。

 オブライエン氏は、この10年間の中国の軍備増強は、米国にとって長期的な脅威であり、特にミサイルを増強し、周辺海域での「接近阻止・領域拒否(A2AD)」という戦略で米軍艦艇などの接近、侵入を阻もうとしていることを問題視した。

 その上で「香港での中国の振る舞いを見て、台湾について特に心配している。これによって歯止めがなくなったように見える」と指摘、「次に中国が目指す場所があるとすれば台湾だ」と警告した。

 中国はこのところ、台湾に対して攻撃的な軍事行動を取っている。今月に入って台湾近海で大規模な軍事演習を実施、中国国営メディアは、台湾侵攻に備えたものとの見方を伝えた。

 さらに、多数の戦闘機、爆撃機が、台湾海峡上空の中間線を越えて、台湾領空に侵入する事例も発生、台湾政府は警戒を強めている。

オブライエン大統領補佐官(UPI)

オブライエン大統領補佐官(UPI)

 一方、中国国防省の譚克非報道官は24日、北京での会見で、「台湾の分離主義勢力が、いかなる状況の下であれ、台湾の分離を試みようとすれば、それを阻止するため、いかなる手段も講じる」と主張。中国による軍事演習は、「外国からの干渉」と「台湾の分離主義勢力」を標的としたものであることを明らかにした。

 中国共産党は、台湾を「一国二制度」の下で中国に取り込むことを目指すとともに、台湾の民主主義体制は守ることを約束している。

 しかし、「一国二制度」の下で自治が認められていた香港での民主派弾圧を受けて、台湾をめぐる中国による約束への信頼はすでに失われている。

 オブライエン氏は、中国からの脅威が強まっており、台湾は防衛力を増強する必要があると主張。現在の台湾の防衛費は国内総生産(GDP)の約1・2%だが、「防衛費の増額を真剣に考えるべきだ」と訴えた。

 台湾は、戦闘機F16、66機を約80億㌦で導入することで合意した。台湾海峡の対岸の中国領に届く空対地巡航ミサイルを導入することも決めている。

 オブライエン氏はこれについて「台湾は決意と意思を示す必要がある。台湾はその方向に動き始めていると思う」と指摘した。

 また、レーガン元大統領が取った「力による平和」政策を取ることを台湾に呼び掛けた。この政策はトランプ現政権でも取られており、「見ての通り、力による平和は効果を挙げている。米国は、台湾海峡の平和を望み、大陸と台湾が良好な関係を結ぶことを望んでいる」と述べた。