米歴代政権 中国共産党の本質見誤る
国務省顧問 マイルズ・ユ氏が主張
米国務省政策企画局の一員としてポンペオ国務長官に中国政策をアドバイスしてきたマイルズ・ユ氏(中国名・余茂春)は本コラムとのインタビューで、米歴代政権は中国の顔色をうかがうばかりで、中国共産党の本質を見誤ってきたと指摘、マルクス・レーニン主義と自国中心のナショナリズムに支えられた中国の覇権拡大に警鐘を鳴らした。
ユ氏はこの3年間、対中政策の見直しに取り組んできた。トランプ政権は歴代政権の政策を転換し、中国を最大の戦略的敵国と位置付けており、ユ氏はこの対中政策を「原則に基づく現実主義」と呼んでいる。
ユ氏によると、中国共産党は開かれた、統制の取れない民主主義の弱点を巧みに利用し、「多くの米国の中国専門家を取り込み、西側の政界、シンクタンクで中国の指示を実行させてきた」という。
また、トランプ政権は、米国が「中国カード」を扱うより、中国の方が「米国カード」をうまく扱ってきたことをこの数十年間で初めて認識した政権だと指摘。共産党支配の中国は、外部からの影響を嫌い、独自の世界秩序構築を目指していると警告した。
ユ氏は、トランプ政権までの米国の対中政策の概念は間違っていたと主張。1970年代に外交関係が築かれて以降、米政府は両国関係を主導できるという強い自信を持っていたが、実際には中国が米国カードをうまく使い、米国の利益を損ねてきたと訴えた。
その上で、米政権は中国国民と共産党指導部とをはっきりと区別してこなかったと指摘。「中国国民が資本主義を追求し、共産主義思想にますます無関心になっていったことから、米国の政治・文化エリートらは、強固で教条主義的なマルクス・レーニン主義の中国共産党の内部中枢が見えなくなっていた」との見方を示した。
このような見方はポンペオ氏のこれまでの演説にも反映されており、中国が抱える問題は、国民ではなく中国共産党にあるとの主張に至っている。
ユ氏は、これまでの米国の対中政策は「アンガーマネジメント(怒りのコントロール)」であり、「米国の国益ではなく、中国がいかに怒っているかをもとに対中政策を決めてきた」と述べ、中国の顔色をうかがうばかりで、適切な対中政策が取られてこなかったと主張した。
「残念なことに、中国との直接対決を避けようと、中国の詭弁(きべん)に振り回され、中国の偽の怒りをなだめることに汲々(きゅうきゅう)としてきた」と指摘し、米国は、意図的に「怒り」をぶつけて影響力を行使しようとする中国の術数にはまってきたとの見方を示した。
中国・安徽省で生まれたユ氏は、子供のころに文化大革命(1966~76年)を経験、大学進学後の80年に、当時、米大統領候補だったロナルド・レーガン氏の演説を米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)で聞き、「米国に行きたいと思うようになった」という。
85年にペンシルベニア州のスワースモア大学に入学。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院時代には、89年の天安門事件で民主化デモの支援活動を行っている。
2016年まで米紙ワシントン・タイムズでコラム「インサイド・チャイナ」を執筆。3年前から米国務省で中国政策顧問を務めている。