アウティング禁止 「LGBT」への過剰配慮だ


 いわゆる「LGBT」に対して、ここまで配慮するのは行き過ぎではないか。三重県知事は、性的指向(ゲイやレズビアンなど)や性自認(性同一性障害など)を本人に無断で他人に知らせる「アウティング」の禁止を盛り込んだ性的少数者差別防止条例を制定するという。

「内心の自由」への介入

 もちろん、何らかの形で知った他者の性的指向や性自認を、本人の気持ちを無視して興味本位に第三者に教えるべきではない。しかし、条例でアウティングを禁じるとなると、別次元の問題が生じよう。性的少数者を特別扱いすることになり、対等な人間関係を妨げることになるし、条例が目指す差別や偏見の解消にもつながらないだろう。

 恋愛感情を告白された場合を考えてみれば分かりやすい。男女の間であれば、告白された側が友人・知人に相談することは普通にあることで、相手の許可を得ずともまったく問題にならない。

 だが、アウティングを禁止する条例が制定されれば、同性から恋愛感情を打ち明けられて困惑しても、告白された側は萎縮してしまい、誰にも相談することができずに一人で悩みを抱え込んでしまうだろう。つまり、同性愛者の気持ちを優先するあまり、告白された側に秘密にする義務を負わせることで、行政による「内心の自由」への介入にもなるのだ。

アウティングをめぐっては2015年4月に「一橋大学アウティング事件」が起きている。同性愛者だった同大学の大学院生が、友人の男子学生に愛情を告白したことがきっかけで起きた事件だ。

 告白された男子学生が、友人間のインターネット交流サイト(SNS)に「お前がゲイであることを隠しておくのはムリだ。ごめん」と投稿したことから、ショックを受けた院生が投身自殺を図って死亡した事件だ。これをきっかけに、一橋大学のある東京都国立市や豊島区などでアウティング禁止を盛り込んだ条例が制定されているが、三重県で制定されれば都道府県レベルでは初めてとなる。

 鈴木英敬知事はアウティングについて「当事者を傷つけるだけでなく、家族関係や就労を不安定なものにしたり、友人との人間関係を分断し孤立に追い込んだりしかねない」と語り、条例の必要性を強調したが、条例で禁止することで、逆に人間関係がギクシャクしてしまうことをどう考えるのか。

 また、「県全体として、多様性が尊重され、包容力ある社会となるよう、しっかり検討する」と語っているが、 多様性の尊重がなぜアウティング禁止に結び付くのか、分かりづらい。知事の発言からは、多様性の尊重というよりも、現在日本でも活発となっているLGBT運動の影響がうかがえる。

非常に危険な「多様な性」

 この運動は「多様な性」を訴えて男女の愛も同性愛も同じ価値を持つと主張する。しかし、これは、一夫一婦制を採って男女一対一の性秩序を堅持することで、社会の安定と発展を図るわが国の結婚制度とは矛盾する非常に危険な考え方であることを忘れてはならない。

(サムネイル画像:Wikipediaより)