中国、特定の民族狙う生物兵器研究か
中国政府による新型コロナウイルス隠蔽(いんぺい)疑惑を受け、中国の生物兵器開発に新たな疑念が生じている。複数の米当局者が、特定の民族、集団を攻撃できる生物兵器の研究を行っている可能性を指摘した。
トランプ政権高官はワシントン・タイムズ紙に、中国は民族や集団を攻撃できる生物兵器の開発など極秘計画を進めているといわれていると指摘。「民族的少数派への生物学的実験の可能性に注目している」ことを明らかにした。
活動の詳細は、中国の極秘計画に直接携わった情報源から入手したもので、米情報機関の秘密報告に盛り込まれているという。
中国は1984年に生物兵器禁止条約(BWC)に調印しているが、この高官は「中国がBWCを順守し、国際義務を果たしているのか、依然、懸念を抱いている」と、中国への不信感を示した。
生物兵器安全保障を専門とする当局者らも長年、中国の活動に懸念を抱いてきた。
中国は2011年に国連の生物学的安全保障の手引書の作成に関わっており、その中で中国自身が、急速な技術の発展により、特定の集団に対する生物兵器、民族集団を攻撃できる毒性を持つ病原菌の開発に懸念を指摘していた。
手引書の中で、中国はそのような能力の開発に取り組んでいることを示してはいないが、米情報当局者、外交専門家らは、中国がそうした計画を過去に持ち、継続しているとみている。
手引書は「生物学的脅威の防止―何ができるか」というタイトルが付けられ、専門家らは、ここから中国の研究活動の一端を見て取ることができると考えている。
中国当局者らはその中で、「病気と闘い、健康を増進する」ための科学的突破口を開くことは、効果的な兵器開発の契機となり得ると主張。「病原菌の拡散を容易にする標的型の薬物送達技術」「特定の集団の遺伝子マーカー」「人工病原菌の創出」についても言及している。
ポーラ・デサッター元米国務次官補は、中国はこの手引書で「これらの活動に取り組んでいることを認めた。特定集団に対する生物兵器を使用する意図を示唆している」と指摘、「武漢は、中国がそのころから取り組んできた生物兵器を試す実験だった可能性があるとすると恐ろしいことだ」と述べた。
国務省の最新の年次武器管理順守報告では、中国の生物兵器計画に対する懸念が指摘され、中国はBWCに反し「攻撃的(生物兵器)能力」を維持しているとの見方を示している。
トランプ政権の元高官も、中国が特定集団に対する生物兵器開発の可能性を指摘した。このような懸念は19年の年次報告にも盛り込まれているが、それ以前は国務省も情報機関もそのような見方には否定的だったという。