新型コロナ研究 中国が公開を制限

ビル・ガーツ

ビル・ガーツ氏

 中国政府は、新型コロナウイルスの発生源に関する研究の公開を制限する新たな規制を研究所、大学などに通告したことが明らかになった。隠蔽(いんぺい)の新たな兆候とみられ、中国当局が発表した感染・死者数も実際よりも大幅に少ないとの見方が専門家の間で出てきている。

 中国の大学、研究機関のサイトに、新型コロナの発生源に関するすべての研究論文は「厳しく管理され」、中央政府当局の慎重な検査を受けた上で公表しなければならないと命じる政府からの内部通告が掲載された。

 中国政府は、科学者らに発生の調査を求めたとされているが、調査が実際に進められているかどうかは分かっていない。政府報道官は数日前から頻繁に、感染拡大への対応で国際協力の強化を呼び掛けるようになっている。

 しかし、米国の公衆衛生専門家らは、中国が昨年12月の感染発生について詳細を隠蔽したと主張。中国政府は米国などの専門家による初期段階での中国現地での度重なる調査要求を拒否してきた。

 米政府の新型コロナ対策を指導する国立アレルギー・感染症研究所のファウチ所長は8日、FOXニュースで「正確な情報が得られなかった。最初から不正確な情報が拡散されていた」と中国の隠蔽を非難した。

 中国は当初、人から人には感染しないと主張していたが、ファウチ氏は「今では、中国で人から人への感染が起きていたことが分かっている」と中国からの不正確な情報が感染を拡大させたと主張している。

 中国人研究者が米CNNに語ったところによると、命令は教育省が出したもので、「発表を管理し、感染源が中国でないように見せ掛けるために中国政府内で一致して取り組んでいるのだと思う」と懸念を表明した。

 新たな規制の下では、論文は複数の承認を得なければ公表することができない。まず大学の学術委員会、教育省の承認を得、その後、最高行政機関の国務院に送られることになるという。

 通告は、3月25日の新型コロナに関する国務院特別委員会の会合の後に出されている。

 上海の復旦大学のサイトに10日に掲載された通告はすぐに削除された。武漢の中国地質大学、武漢大学の人民医院のサイトにも掲載されたが、当局者がCNNに語ったところによると、この通告はもともと非公開のものだという。

 米太平洋艦隊で情報部門トップを務めたファネル元大佐は、「これは、新型コロナの発生、拡大への関与を否定するための中国共産党の戦略の一環。習近平国家主席は、『事実』をコントロールできるかどうかに党の存亡が懸かっていることを分かっている」と指摘、隠蔽が体制維持のためとの見方を明らかにした。

 またファネル氏は、その後中国は「中国による世界の支配体制が最も成功している」と主張する情報戦略を展開し、「米国の民主主義は混沌(こんとん)としており、はるかに多くの死者を出した」と民主主義への優位性を主張するようになると警告した。

 中国の感染者数に対する疑惑もたびたび指摘されている。

 中国の公式発表では、感染者は約8万3000人、死者は約3300人となっているが、中国よりも感染の確認が2カ月近く遅かった米国の感染者は現在57万7000人を超えた。

 これについてワシントンのアメリカン・エンタープライズ政策研究所(AEI)の常勤研究者デレク・シザース氏は、他国の発生状況や中国の情勢を勘案すると、中国の実際の感染者数は290万人、死者は13万6000人に上るはずだと予測している。