玉城沖縄県知事、不要不急の週末外出自粛を要請
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、沖縄県の玉城デニー知事は、国の緊急事態宣言が発令されている間は、宣言の対象地域の7都府県をはじめ県外からの沖縄訪問を自粛するよう呼び掛け、11日と12日の週末には不要不急の外出を控えるよう要請した。(沖縄支局・豊田 剛)
沖縄県でコロナ感染者急増、那覇市「拡大警戒地域」入りか
沖縄県の最大の繁華街である那覇市の国際通りとその周辺は年間を通じて観光客であふれていたが、現在、その光景は一変している。特に土産屋の大半がシャッターを下ろし、商店街全体で7割程度の店舗が閉店している。
那覇市のある小売店の店主は、「志村けんさんの死去で客足が一気に減り、緊急事態宣言で売り上げは壊滅的になった。在庫もだぶついて、生活するためには少しでも売りたいし、店を閉めるわけにもいかない」と苦しい胸の内を語った。
「沖縄でも感染者が増えていて、県民にはこの週末(11日と12日)、不要不急の外出は自粛をお願いしたい。特に夜間の会食、沖縄では『模合(もあい)』の集まりもあるが、感染が広がるリスクが高く、控えていただくようお願いしたい」
玉城知事は10日の定例記者会見で、政府の「緊急事態宣言」が出されて初めての週末、県民に不要不急の外出を自粛するよう呼び掛けた。それに先立ち、9日には、緊急事態宣言が発令されている間、県外からの来県自粛と県民の外出自粛を要請した。
沖縄県では、4日以来、連日感染者が確認され、14日までに感染者は77人になった。感染者が3人だった3月26日までは10万人当たりの感染者数(感染率)は0・2人台で推移していたが、4月5日には約1・1人、12日に約4・5人と急激に感染者が増えた。増加率は、緊急事態宣言の対象となった福岡県に匹敵する。
来県自粛の要請は観光立県の沖縄にとって経済面での影響も大きい。これについて玉城知事は「沖縄県民の命と健康を守ることが最優先である」と強調した。
観光客に人気の石垣島などの離島、現地の医療体制は脆弱
玉城知事は3月下旬以降、県民に不要不急の県外への旅行を控えるよう呼び掛けてきたが、春休み期間は県外から観光客が多く沖縄を訪れた。中でも、感染のリスクが少ない安全地域とみなされた石垣島には3月、若者や家族連れの旅行客が殺到した。石垣市の中山義隆市長は3月31日、来島の自粛を求めた。離島では医療体制が脆弱(ぜいじゃく)で、受け入れ態勢に限界があるからだ。他の離島の自治体でも来島自粛を求める動きが広がっている。
那覇市医師会(山城千秋会長)は9日、「那覇市医療の緊急事態宣言」を発表した。政府の専門家会議が3区分するうち最も深刻な「感染拡大警戒地域」に移行しているとの見方を示す。
山城氏は「この2週間が勝負だ」と強調した上で、「感染者が増え続けると病床が不足し、入院が必要な他の疾病患者受け入れに支障が出る」として、那覇市民らに外出自粛を求めると同時に、行政に対して病床確保や医療者支援を訴えた。県内の感染症用病床は最大45床で、すでに限界に達しているという。
さらに、沖縄県医師会理事で那覇西クリニックの玉城研太朗診療部長は、医師や大学教授、政治家らとの連名で、①コロナウイルス感染収束までの不急な沖縄県への渡航自粛②渡航自粛に伴う観光・経済の徹底的な補助・対策――を求める署名を行い、沖縄県庁に提出した。
また、人材育成やプロジェクトマネジメントに携わる北林大さん(31)ら3人の有志は、①入域者の2週間隔離②県内在住者・訪問者の2週間の外出制限③外出制限期間における感染者および感染経路のモニター――などより厳しい措置を求める署名活動を行い、11日までに7千人超の署名を集めた。
こうした度重なる要請が県を動かしたと言える。県は、医療崩壊を防ぐ目的で、ウイルス感染の軽症患者や無症状患者向けにホテルなどの宿泊施設を確保するなど、医療機関などと調整を進めている。
こうした中、県は10日付で県庁内の新型コロナウイルス対策本部に総括情報部を新設し、新型コロナウイルス拡大防止に向けた体制を強化した。専任職員15人を配置して、情報収集や部局間の連絡調整、医療提供体制の確立、感染クラスター(感染者集団)防止のための感染動向分析などを担当する。
県内の感染状況は日を重ねるごとに厳しさを増している。13日には、石垣島で2人の感染者が確認された。同島で感染症に対応できるのは3病床しかない。これ以上感染者が増えた場合、現地の医療機関では対応できなくなることから、地元は不安に包まれている。







