新型コロナで形変わる沖縄の伝統文化「清明祭」


沖縄発のコラム:美ら風(ちゅらかじ)

 沖縄で「シーミー」と呼ばれる清明祭。清明は、二十四節気の一つ。春分の日から15日目がそれに当たり、今年は4月4日から時期を迎えた。中国由来とされる風習で、沖縄のシーミーでは、親族がお墓参りをし、そのまま墓前で食事をするのが通例だ。

 沖縄県医師会はこのほど、新型コロナウイルス感染が拡大している現状を受け、シーミーの規模縮小や代表者による開催などを求めるよう要請した。

 県医師会の宮里達也副会長は集団感染を防ぐため、医療現場から強い要望があったと説明。シーミーは「とても大事な行事であることは重々承知しているが、今は集団感染をいかに防ぐかだ」と前置きした上で、「単なるお願いではなく、強いお願いだ」と強調した。

 こうした呼び掛けは県民の間で好意的に受け止められている。親族全員を集めずに家族の代表だけで済ますケースや、墓に行かずに家の仏壇で済ませた人も多いという。

 同じく清明祭を祝っている中国では、墓参り禁止を発表した。また、台湾では、政府がインターネットを使った墓参りを呼び掛けている。

 これに対し、沖縄県は、県として正式な方針を発表していない。人々が密接し感染リスクが高いシーミーの実施の是非について尋ねられた玉城デニー知事は、「できるだけ距離を開けて、みんなで、ウートートーして(拝んで)ほしい」と語るにとどめた。

 また、宮古島市の下地敏彦市長は、宮古島で主に実施されている「オトーリ」の自粛を求めた。多人数が集まる酒の席で泡盛を回し飲みする地元の作法のことを指す。これは感染の危険性が極めて高い。

 新型コロナウイルスは沖縄の伝統文化の形まで変えてしまった。

(T)