山田 寛
18年の国際関係、ショックだった言葉
今年の国際関係の中で、衝撃を受けた六つの言葉(群)を並べたい。 ①6月の米朝首脳会談の際のトランプ米大統領の金正恩・朝鮮労働党委員長への賛辞は大衝撃だった。「率直」「立派」「有能」「賢明」「民を愛している」「誰にも反…
ブッシュ父大統領の米国、勝ち誇らない外交の力
先日94歳で死去したブッシュ父41代米大統領。その在任時に駐米記者だった私なりの思いをつづりたい。あの時代、米国は東西冷戦終結と湾岸戦争勝利で自信と誇りを取り戻したが、ブッシュ氏は誇っても勝ち誇らない外交大統領だった。…
移民問題タブー視をやめよう
出入国管理法改正に賛成だが 外国人労働者受け入れ拡大のための出入国管理法改正案に対し、「拙速」との批判が左右から出ている。だが、少子高齢化社会の助っ人集めと、技能実習、留学、難民申請などを名目にした“ゆがんだ”就労横行…
安田純平事件から、後続ジャーナリストへの助言
シリア武装勢力から解放された安田純平氏を、左派メディアは英雄の様に扱い、ネトウヨは「人質プロ」と酷評した。どちらでもなかろう。かつて小突入取材を経験した私は、「第2、第3の安田純平氏」の可能性を持つ後輩達に次の様に助言…
ウイグル弾圧問題、対中国のリトマス試験紙だ
マクロン仏大統領が、旧仏植民地アルジェリアの独立戦争(1954~62年)時に、仏軍が組織的な拷問など人道に反する罪を犯し、国に責任があると認めたのは先月中旬。特に57年に独立運動家で25歳のアルジェ大教授、モーリス・オ…
ノーベル平和賞決定と日本、戦後70年談話が泣いては困る
今年のノーベル平和賞受賞者は、紛争下の性暴力と闘ってきたコンゴ民主共和国のデニ・ムクウェゲ医師と、イラクの少数派ヤジディ教徒の女性、ナディア・ムラドさんに決まった。内戦状態の国で4万人以上のレイプ被害者を助けた医師と、…
イスラエルとパレスチナ 育て、融和の心の種と芽
米主導の圧力の結果、朝鮮半島の南北融和は急進展。だがパレスチナは、国連パレスチナ難民救済事業機関への拠出停止その他の米国の圧力に強く反発、対イスラエル融和どころか第3次インティファーダ(民衆蜂起)の懸念すら出ている。 …
北朝鮮報道史の二つの汚点
先月、脱北者5人が東京地裁に北朝鮮政府を人権侵害で初提訴した。1959~84年に、在日朝鮮・韓国人と日本人妻ら約9万3000人を虚偽宣伝で騙(だま)し、帰国させる「国家的誘拐」を行った。朝鮮総連が「地上の楽園」と宣伝し…
フェイク退治を名分に、世界で報道の自由抑圧が進む
世界流行語大賞があれば、今年の1位は「フェイク(偽)ニュース」だろう。 報道を「国民の敵」と呼ぶトランプ米大統領は、先日も「報道の80%はフェイク」と決め付けた。 日本にも例の慰安婦報道などがあるから、トランプ流毒…
スポーツ支援も含めて 東京五輪の真価が決まる
今月千葉で行われた世界女子ソフトボール選手権の予選で、アフリカ代表のボツワナは全7試合コールド負けした。総失点97、得点1。そのチームに日本人コーチ、中村藍子さんがいた。元選手で昨年初めから現地で指導している。 ボツ…
共産・強権独裁国家も、遺骨にもっと敬意を
朝鮮戦争休戦から65年、約55柱の戦死米兵の遺骨が北朝鮮から米国に返還され、トランプ米大統領は「家族たちにとり素晴らしい瞬間。金正恩氏よ、ありがとう」と大喜びした。 戦死・行方不明米兵に懸ける米国の家族、国民の思いは…
日本PKO只今4人、高田警視の千の風を想う
「何しろたった4人ですよ」。長く国連平和維持活動(PKO)に関わった大島賢三・元国連事務次長が心底残念そうに言った。 PKOは現在世界で14ミッションが実施され、10万人以上が従事している。だが日本は昨年5月、5年半…
難民・移民・外国人労働者、日本はウィンウィンの関係を
欧州がまた難民・移民で大揺れだ。 「移民問題が欧州連合(EU)の命運を握る」(メルケル独首相)。 だが、受け入れ大国だったドイツやイタリアも含め、抑止ムードが強まっている。 そんな中、北アフリカのリビアなどからす…
金正恩氏への小提言、隗より始めて普通の国へ
金正恩朝鮮労働党委員長殿。米朝首脳会談で「安全保証」や「米韓演習中止」を獲得、“後ろ盾”中国との絆も結び直し、満足しておられるでしょう。但(ただ)し非核化は今後の米朝交渉次第。トランプ大統領は日本に非核化費用5兆円を出…
米朝首脳会談後、アジアの人権は厳冬期入りか
米国は米朝首脳会談で、北朝鮮の人権問題をなるべく口にしない暗黙の約束をしたようだ。人権抑圧非難などで体制を揺さぶらないことも「安全保証」の一部なのか。トランプ大統領は「素晴らしい人柄」「国民に愛されている」などと金正恩…
ベトナム残留日本兵、家族の絆の強さ印象づける
先日NHK・BSで放映された「遥かなる父の国へ ベトナム残留日本兵家族の旅」は、ベトナムに残された家族たちの父親との絆を強く印象づけるドキュメンタリーだった。 ベトナム残留日本兵は、1945年の日本敗戦後、ベトミン(…
今こそバッジの着用を、河野外相と辻元議員に訴える
「千載一遇の最後のチャンスだ」。北朝鮮拉致被害者の家族は今、米朝首脳会談で(またその後あり得る日朝首脳会談で)、事態が大進展するよう必死に祈っている。 私は昨年9月のこの欄で、「河野外相は拉致被害者救出運動のシンボル…
南北、米朝首脳会談 北はベトナム式統一を狙う?
43年前の4月、ベトナム、カンボジアの戦争で共産側が勝利し、インドシナ共産主義半島が成立した。今年、その記憶がいつも以上に気になる。27日の南北朝鮮、その後の米朝の首脳会談に臨む北朝鮮の究極の狙いが、「ベトナムコース」…
習体制と精日と溥傑・浩夫妻
若者はどう反応する 中国に習近平絶対体制が確立され、日中関係はどうなるか。昨年以来、「日中関係改善ムード」が言われているが、あくまで中国の戦術や都合による改善ムードだ。「抗日救国」が中国共産党の歴史的金看板なら、習近平…
走れ新幹線 日中、アジアでの鉄路の戦い
「日中高速鉄道戦、戦火は全世界で燃え上がる」 中国新華社通信のネット「参考消息網」は2016年、こんな見出しの記事を配信した。15年にインド初の高速鉄道(ムンバイ―アーメダバード)建設受注で、中国は日本に敗れた。中印…
アジアでもミー・トゥー 魔男狩り、政治利用ない前進を
米ハリウッド発の運動、性暴力・セクハラ告発の「ミー・トゥー」(#Me Too)は、アジアにも広がり出したな。先日、国際人権NGOのシンポジウムに参加してそう実感した。 会場は300人近い参加者で満員。インドの女性人権…
スポーツとさわやかさ、韓弼花選手を応援したころ
北朝鮮と冬季五輪。思い出すのは北朝鮮が初めて五輪に選手団を派遣した1964年インスブルック大会の女子スケート3000㍍で、銀メダルを獲得した韓弼花(ハンピルファ)である。私は朝鮮戦争(1950~53年休戦)で一時、半島…
逆方向の「歴史の終わり」へ、国際NGO報告から
年明け、「フリーダムハウス」(FH)や「ヒューマンライツ・ウォッチ」(HRW)など、有力国際NGOの2018年版調査報告書を読み、気がふさいだ。 FHは1970年代から世界各国・地域の民主・自由度を客観的に調査し、総…