加藤 隆
人間の本性と情報化社会の限界性
名寄市立大学前教授 加藤 隆 「自分への価値」確信望む 無知の知を自覚し視点転換を トルストイに『人は何で生きるか』という作品がある。傲慢な金持ちが靴職人である主人公の店にやってきて、持参した皮を渡しながら上等の長靴を…
人生の来し方行く末を思う
名寄市立大学教授 加藤 隆 「命」に命令と使命の意味 人間の計らい超えた不思議さ 人生の来し方行く末を思うとき、人間の計らいを超えた不思議さにこころ打たれる。自分がこの世に生まれ落ちた不思議さ。人類史の悠久の時間の中で…
医師・中村哲の生き様を支えた思想
名寄市立大学教授 加藤 隆 内村鑑三の“教え”を実践 「勇ましい高尚な生涯」を歩む 中村哲という人物がいる。医師としてパキスタンでハンセン病治療に取り組み、その後は長年にわたってアフガニスタンで貧困に苦しむ人々の診療に…
現代社会が抱える「故郷喪失」
名寄市立大学教授 加藤 隆 東京一極集中で地方疲弊 根源の「存在」見失った現代人 東日本大震災が起きてから数カ月が経ったころ、世界的テノール歌手が日本のステージに立って、唱歌「ふるさと」を情感豊かに歌っているのを目にし…
今求められる魂のホームベース
名寄市立大学教授 加藤 隆 豊かな「我―汝」関係を 神仏の「呼びかけ」願う人間 流行歌はその時代の人々の願望を映すと言われる。流行歌研究によると、年代によって特徴的なフレーズが見られるという。1970年代は「花が咲く」…
神丘のインマヌエル開拓団
名寄市立大学教授 加藤 隆 息づく自由・独立の精神 重要な「家」としての関わり方 北海道の南西部の今金町に神丘という地域がある。美瑛を思わせるなだらかな美しい田園が遥(はる)か向こうまで続いている。明治から戦時中までは…
視点を転換することの大切さ
名寄市立大学教授 加藤 隆 世界や社会の光景が一変 水平的見方から垂直的見方へ 自分の未熟談を晒(さら)すことになるが、私は以前に幼稚園と小学校の教師を数年ずつしていたことがある。幼稚園の新任の時、幼児たちの描いた絵を…
無味乾燥な歴史観からの転換
名寄市立大学教授 加藤 隆 大切な人間へのまなざし 血の通った物語として自覚を ロナルド・レーガンは大統領就任演説で次のような言葉を残している。「私の正面には記念碑的人物、即(すなわ)ち建国の父ジョージ・ワシントンの記…
危機に接し露わになる「魂」
名寄市立大学教授 加藤 隆 問われるいのちの根幹 「人間に問う存在」に目覚めよ 「死んでいる生者」「生きている死者」という言葉がある。「死んでいる死者」「生きている生者」が我々の常識なのだが、確かにそのようなこともある…
「知ること」と「信じること」
名寄市立大学教授 加藤 隆 信頼が知識獲得の前提に 事実に対する解釈が人生左右 我々は見えるものに囲まれ、見えるものしか信用しないような風潮の中に生きているが、本質的には見えないものに大きく左右されている。結婚相手に「…
内村鑑三と新渡戸稲造の教え
名寄市立大学教授 加藤 隆 「天の視点」で人生考えよ 品格と魂を磨き「真の人間」に 我々は世界に誇る平和国家と自負している。しかし、心の覆いを一皮めくると、言いようもない孤独や不安に苛(さいな)まれているのも事実である…
「ナラティブないのち」とは
名寄市立大学教授 加藤 隆 人間は「物語」を紡ぐ存在 「情報」は代役にはなり得ず 以前、大阪のホスピス病棟で得難い経験をしたことがあった。余命がわずかとなった中年の男性が、20年音信不通にしていた弟の連絡先を見つけ出し…
北海道を開拓したキリスト者
名寄市立大学教授 加藤 隆 理想郷の建設を目指す 新渡戸・新島らの薫陶を受け 北海道は、平成30年に命名150年を迎えた。蝦夷地と呼ばれていた未開の大地は、明治新政府の北海道開拓により、明治2年の人口6万人が、150年…
ハウスのあるホームレス
名寄市立大学教授 加藤 隆 孤独死とホテル型家族 人間関係「分離」する無縁社会 ホームレスという言葉を聞くと、どのような光景を思い浮かべるだろうか。都会の地下通路の片隅でうずくまっている寄る辺なき人々だろうか。最近では…
「いのちが、私している」の視点を
名寄市立大学教授 加藤 隆 「Be」は絶対的呼びかけ 自分中心の生き方を変えよう 親しい友人仲間と話をしていると、昨今の職場事情が伝わってくる。そこには何か共通項とでも言えるような風景が垣間見える。一つは、親が我が子に…
イスラエルの思想と自己犠牲
名寄市立大学教授 加藤 隆 特権を与えられた人間 神の命令に従う責任と義務 『ツキを呼ぶ魔法の言葉』の著者として一世を風靡(ふうび)した五日市剛氏だが、彼が学生時代にイスラエルで出会ったおばあさんの言葉は人を引き付ける…
「生きる力」の意味再考を
名寄市立大学教授 加藤 隆 死生観の涵養こそ必要 主語と目的がない戦後教育 子どもたちに「生きる力」を育てることこそ急務だと耳にする。この言葉が公になったのは、20年前の中教審答申である。「子ども達に必要となるのは、い…
新井奥邃の思想に学ぶ
名寄市立大学教授 加藤 隆 「父性と母性」備えた神 宇宙創造の動因は神の「愛」 幕末から大正期に生きた新井奥邃(おうすい)という宗教者がいる。その特色は、名利に程遠くして隠者の生涯であったこと、青年たちに共同生活を通し…
循環型人生観で意義ある生を
名寄市立大学教授 加藤 隆 四季に見立てて人生理解 死んだらおしまいの直線型 吉田松陰の最後の言葉を記した留魂録というものがある。処刑を前にした自身の心情を今に伝えている。「人にはそれぞれに相応しい春夏秋冬がある。十歳…
西欧文明の神髄伝えた中村正直
名寄市立大学教授 加藤 隆 英で自主自律の精神学ぶ 女性の教養の高さにも注目 中村正直は号を敬宇という。天保3(1832)年に生まれ、明治24(91)年に没している。江戸時代の儒学の本山であった昌平黌(しょうへいこう)…
「生命礼賛」の風潮への疑問
名寄市立大学教授 加藤 隆 物欲的価値のみを重視 大いなるものへの畏れなし 生きてこそなんぼという価値観、生命尊重主義、若さこそ人間の輝きというような「生命礼賛」の風潮が社会の隅々にみなぎっている。教育界はここ20年「…
行き過ぎた「分析知」の弊害
名寄市立大学教授 加藤 隆 孤独に苛まれる子供たち 「関係知」の知恵語る梵我一如 我々がよく目にする植物について二つの言い方で描写してみたい。一つ目。「典型的な場合、雌蕊(しずい)は1本、雄蕊(ゆうずい)は6本。6枚に…
「Do型人間」推進論への疑問
名寄市立大学教授 加藤 隆 生の被贈与性」を忘却 謙虚、責任、連帯の崩壊招く 以前に医療関係者から50代の男性患者の話を聞いたことがある。彼は経営者として社会の中でバリバリと働いていたが、癌(がん)が見つかって入院して…