G20農相会合、日本は生産性向上に貢献を
20カ国・地域(G20)農相会合が新潟市で開かれた。採択されたG20農相宣言では、農業の生産性向上に向けた人工知能(AI)やロボット工学の活用促進、売れ残りや食べ残しで廃棄される「食品ロス」の削減などを打ち出した。
「スマート農業」の実演も
農相会合は、6月下旬に大阪市で開かれるG20首脳会議(大阪サミット)に関連する一連の閣僚会合の第1弾。G20メンバーとタイやチリ、国連食糧農業機関(FAO)など計30超の国・地域や国際機関が参加した。
宣言では、先端技術の活用に関連し、農業従事者が知識・技能を習得する環境整備の重要性を指摘。高齢化を背景に、若年層の新規就農の確保につながる利点も明記された。
会合に関連し、新潟市では無人田植え機やドローン(小型無人機)を使った「スマート農業」の実演会が開かれた。日本は農産物輸出を年内に1兆円に拡大する目標を掲げているが、世界の人口と食料需要が増加を続ける中、日本の先端技術で農業の生産性向上にも貢献したい。
食品ロスの削減については、G20が主導的立場で流通体制の再構築などに取り組むとしている。世界では年間約13億㌧の食料が捨てられており、その4分の1だけでも世界の飢餓人口を十分に養えるという。無駄をなくすための国際協力を強化する必要がある。
宣言には、アフリカ豚コレラなど家畜伝染病への対策に関しても協力することが盛り込まれた。アフリカ豚コレラは現在、中国で猛威を振るっており、大量の豚が殺処分されている。感染拡大を防ぐため、各国は水際対策を強化するとともに、有効なワクチンの開発を急がなければならない。
今回の会合の際、吉川貴盛農林水産相は各国の農業担当相と相次いで会談した。パーデュー米農務長官との会談で、日米新貿易交渉における農産品の関税撤廃・引き下げについて、環太平洋連携協定(TPP)の水準が限度との考えを示したのは当然のことだ。
米国抜きのTPPなどの発効で、日本市場での米農産品の競争力は相対的に低下している。日本は貿易交渉を進めるとともに米国にTPP復帰を粘り強く促していくことが求められる。
また吉川氏は、中国と韓国の農業担当相に対し、東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故以降、両国が継続している日本産食品の禁輸措置について早期に解除するよう要請した。中国は原発事故後、福島や宮城、茨城を含む10都県からの食品輸入を禁じており、韓国では福島のほか青森、岩手など8県産の水産物の禁輸を続けている。
吉川氏は中国の韓長賦農業農村相と、科学的根拠に基づいた規制緩和協議を進めることを改めて確認。韓国の李介昊農林畜産食品相には、禁輸解除が日本の被災地復興につながることを説明し理解を求めた。
風評払拭へ情報発信を
会場では福島など被災地の食材を使った料理が振る舞われ、品質の高さや安全性をアピールした。日本は風評を払拭(ふっしょく)できるよう、さまざまな形で情報発信を続ける必要がある。