残念な文在寅政権の対応 ケビン・メア氏

日韓打開 私はこう考える

元米国務省日本部長 ケビン・メア氏 (上)

 悪化を続ける日韓関係を米国はどう見ているのか。元米国務省日本部長のケビン・メア氏に現状と今後の展望を聞いた。(聞き手=ワシントン・山崎洋介)

日韓関係の悪化に対する米国の反応はどうか。

ケビン・メア氏

 ケビン・メア氏 1954年、米サウスカロライナ州生まれ。ジョージア大学法科大学院で法学博士号を取得。81年に米国務省入省、在日米大使館安全保障部長、在沖縄総領事、日本部長など歴任。著書に『決断できない日本』『自滅するな日本』。

 米政府機関にいる知り合いに聞くと、公には言えないが韓国の手法に疑問を抱いている人が多い。目の前に北朝鮮や中国、ロシアの脅威があるこの時に、なぜ解決されたはずの歴史問題に文句をつけるのか理解できないという。

 シンクタンクにいる専門家たちも、韓国のやり方に問題があると考える人がほとんどだ。6年ほど前に日本で安倍晋三政権が誕生した頃、米国では「ナショナリスト」や「歴史修正主義者」などという批判があった。しかしその後、安倍首相は河野談話を継承し、当時の朴槿恵大統領と慰安婦問題について「最終的かつ不可逆的な解決」をすることで合意するなど、日韓関係の改善に取り組んできた。

 だが、文在寅大統領に代わってから、慰安婦合意を無視した形で「和解・癒やし財団」が解散されるなど、さまざまな問題が起きてきた。

 徴用工問題では、これまでの韓国歴代政権は1965年の日韓請求権協定で解決済みとの立場だった。しかし、文大統領は、個人の請求権が消滅していないとする昨年の韓国最高裁判決に対して何もしていない。

 おそらく文大統領の政治的基盤が弱いため、国民の目をそらすために歴史問題を政治的に利用しているのではないか。

日本は韓国への輸出管理の強化や「ホワイト国」除外を決めた。

 これは輸出できなくなるということではなく、軍事転用の恐れがある品目について手続きが変更されただけだ。しかし、韓国は感情的に反発している。

 北朝鮮という目の前の脅威があるのにもかかわらず、文大統領は先日、北朝鮮との経済協力で日本に追い付くと言った。金正恩朝鮮労働党委員長が脅威でないと考えているようだが、彼は独裁者だ。

今回の日本の措置は「徴用工問題に対する報復」との見方もあるが。

 タイミングからして徴用工問題と全く無関係だとは思わないが、実際に韓国の輸出管理体制に問題があると考える専門家がほとんどだ。アジアでホワイト国に指定されていた国が韓国だけだったことを考えても、今回の措置はおかしなことではない。

 徴用工判決により韓国で差し押さえられた日本企業の資産が売却されるようなことがあれば、日本は実際に輸出を制限する動きに出るかもしれない。しかし、韓国経済に打撃を与える立場になるので、できれば実施したくないと考えていると思う。

日韓関係の改善に向けた方策は。

 残念ながら、文政権が続く限り問題の解決はあまり期待できない。文大統領はこの問題を政治的に利用していて、本気で解決しようとしているようには思えないからだ。

 安倍首相は日韓請求権協定を韓国が順守しない限り、文大統領との会談には応じられないと言ったが、それは妥当だと思う。そうでないと何度も同じ問題が蒸し返され、また交渉を繰り返すことになる。

 日米もかつて第2次大戦で戦った歴史があったが、それを乗り越えることができた。だから、日本と韓国もいずれは歴史問題を越えることができると考えている。