日韓関係悪化は中露の利益に
元米国務省日本部長 ケビン・メア氏(下)
韓国は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を示唆している。
米軍はこの問題についてかなり不満を抱えている。韓国が理解すべきことは、米軍は日本の協力がないと韓国を防衛することが全くできないということだ。GSOMIAの問題に限らず、朝鮮半島で有事があれば、在日米軍だけでなく日本の民間施設も使う必要があり、物資や医療の面、燃料の運搬などさまざまな形で協力することになる。
例えば、福岡から釜山まで物資や人を運ぶ時に、米軍の計画では海上自衛隊が米軍の輸送船を護衛するという考えもある。その時に釜山の港に海上自衛隊の船を入れるため、事前に日本と韓国で調節する必要がある。そういった協議ができないことは、韓国にとって良くない。
昨年12月には自衛隊機へのレーダー照射事件も起きた。
今回照射された火器管制レーダーは、射撃用のレーダーで、探すためのものではない。米軍だったら、パイロットの判断で反撃してもおかしくない。艦長の判断か青瓦台(大統領府)からの指示によるものかは分からないが、非常に危険だ。その後、韓国国防省は3カイリ以内に近づいた軍用機に火器管制用レーダーを照射すると防衛省に通告してきたというが、国際法上おかしなことだ。
文政権は日本との国家間の合意を無視しているが、日本で民主党政権時代に、日米で合意した米軍普天間基地の辺野古移設案を覆そうとして混乱したことがあった。
私は当時、国務省日本部長だったが、国民と各党にいかに日米同盟が不可欠であるかを理解してもらうことに努めた。具体的にいかにそれを維持するか、運用上何が必要であるかを何回も説明した。確かに大変な状況だったが、国民の間にこの政権が続けば、同盟関係自体が危なくなるという理解があったことが、当時の鳩山政権に圧力になった。
しかし、日本と韓国は同盟関係ではない。文政権が続くことが韓国にとって良くないと国民が理解しないと変わらないだろう。
先月23日、中露合同演習に参加していたロシア軍機が竹島領空を侵犯した。
それは絶対に偶然ではない。ロシアと中国も、日韓の問題を悪化させた方が利益になるので、火に油を注ぐために計画的に実行したとしか考えられない。
日米が中国に対処する上で、現代の防衛体制ではより統合性が必要とされる。本来そこに韓国も加わるべきだ。しかし、日韓摩擦がある限り、それができないことを中露両国はよく分かっている。
今回の領空侵犯に対して韓国が警告射撃したが、日本政府の間には、なぜ韓国軍が射撃したのかという反発の方が、中国、ロシアに対するものよりも強かったようだ。中露両国は、まさにそれを狙っている。
日韓関係の改善に向けて米国ができることは何か。
韓国は米政府に仲裁役を果たしてほしいと要請しているが、それはできないと思う。米国政府は、日韓両国に早く乗り越える必要があると促すことはできるが、具体的に徴用工や慰安婦の問題、レーダー照射事件についてどう解決するか何も言う立場にない。
(聞き手=ワシントン・山崎洋介)