日韓打開、国家間合意は国内判断に優先
韓国世宗研究所日本研究センター長・陳 昌洙氏
戦後最悪とまでいわれる日韓関係。関係打開への方策を内外の人々に聞く。
泥沼化している元徴用工訴訟の問題では、個人請求権も最終的に解決されたとする1965年の日韓請求権協定について文在寅政権は見解を示さないままだ。
文大統領は司法の判断を尊重すると言っているが、国際法の常識では国家間の合意事項は国内の司法判断より上位だ。外交問題まで国内司法が判断するなら行政府は司法から独立していないことになり、それこそ三権分立の原則に反する。
文大統領自身、2000年に初めてこの問題で訴訟が起こされた当時の原告側弁護士の一人だったが、請求権協定で個人請求権が消滅したことを認めて韓国政府が被害者たちに総額約6200億ウォンの慰労金を支払った盧武鉉政権下でナンバー2の大統領秘書室長だったのもまた文氏だ。全ての経緯を知っているはずなのにこの問題で見解を示さず、李洛淵首相に一任しているのは自分は判断を下したくないということなのだろう。判断保留で逆に日本側の不信感はさらに広がっている。
差し押さえられた日本企業の韓国内資産が8月には現金化されそうだが。
そうなれば日本が対抗措置を講じるだろうが、それに対し韓国政府が対抗措置を取るには今度こそ請求権協定への見解を明らかにする必要がある。国として報復するにはその部分を避けて通れないからだ。
日韓で解決できない時に開く仲裁委員会に韓国は応じる気配を見せない。
韓国は日本もやるべきことが残っているはずという考えなので応じないだろう。
来月大阪で20カ国・地域(G20)首脳会議が行われ、文大統領が来日する。安倍晋三首相との首脳会談は実現するだろうか。
文大統領は外交的孤立を避けるため日本に行かなければならないが、日韓首脳会談は難しいだろう。ただ、日本が世界貿易機関(WTO)で敗訴した東北産水産物の韓国輸出問題で、輸入を解禁するなど何かしら日本側に譲歩すれば道は開かれるという見方もある。
近年の日韓関係悪化の背景には韓国側の変化がありそうだが。
日韓は過去の不幸な歴史の清算と関連し65年に日韓基本条約を結んだが、そこには三つの暗黙の前提があった。まず歴史認識問題は争点化しないように両国が管理し棚上げするということ。次に韓国は日本からの技術移転や投資誘致で、日本も韓国の共産化を防ぐため経済協力をしていくということ。最後に米国を中心に反共産主義の同盟関係を築くため日米韓の安保協力が不可欠だということだ。
しかし、今はそれがだんだん崩れている。歴史問題では韓国が民主化された影響もあり、元従軍慰安婦を支援し自分たちの主張を押し通そうとする反日市民団体などの声が大きくなって統制し切れなくなった。経済ではグローバル企業に成長したサムスン電子などが韓国経済を牽引(けんいん)し、日本を競争相手と見るようになった。安全保障面では日米との安保協力は中国が反発するため、日米韓3カ国の連携、特に日本との安保協力には慎重なのだ。
(聞き手=編集委員・上田勇実)










