叩かれるほど強まるトランプ大統領の支持

アメリカの選択 展望2020大統領選(2)

 「トランプは信仰の自由を守るために断固とした姿勢を取っている。私にとってそれはとても大切なこと」

ジーン・ジョンソンさん

トランプ米大統領の選挙集会で最前列に座るジーン・ジョンソンさん 2019年12月10日、米ペンシルベニア州

 米東部ペンシルベニア州で先月行われたトランプ大統領の集会で会場の1階席最前列に座っていたジーン・ジョンソンさん(55)は、トランプ氏の最大の実績として好調な経済と共に信仰の自由促進を挙げた。

 トランプ政権は昨年9月、国連本部で信教の自由擁護に関する国際会合を主催。国内的にも宗教団体の政治活動を容易にする大統領令に署名している。キリスト教徒だというジーンさんは、「神は驚くほどいろいろな形でトランプを用いている」とその印象を語る。

 そんなジーンさんが「怒りを覚える」というのは、メディアや民主党があまりに党派的になっていることだ。

 特にロシア疑惑やトランプ氏に対する弾劾の動きについては、「全くのでたらめ」だと言葉を強める。「だから、彼らがトランプを叩(たた)けば叩くほど、私はトランプをもっと強くサポートするわ」ときっぱりと語った。

 トランプ氏は就任以来、大手メディアや民主党から厳しい非難や疑惑追及を受けてきたが、支持者たちはこうした動きに反発を強めている。

 「あなたは普段、ワシントンにいるの? だったら、“スワンプ(沼)”そのものに囲まれているってことね」

 会場内の売店の列に並んでいたテリーさん(55)は、冗談交じりに記者にこう語った。トランプ氏が前回大統領選で繰り返したワシントン政治の腐敗一掃を意味する「ドレイン・ザ・スワンプ(沼から水を抜け)」が必要だとしきりに訴える。

 大手メディアや民主党がトランプを叩くのは、「トランプが彼らの嘘(うそ)やごまかしをすべて暴いた」ことが原因だという。「ロシア疑惑がダメだったから、今度は弾劾でトランプを排除しようと躍起になっている。でもそうはならない。私たちがしっかり支えるから」と意気込んだ。

 トランプ支持者にとって、弾劾の動き自体が「政治の腐敗」そのものなのだ。

 ペンシルベニア州中部の小さな町、グランビルで機器関連会社を経営するスコット・スタンフォードさん(54)は、「民主党は弾劾のために何百万㌦もの税金を無駄にしている。結局上院で否決されるに決まっている。どこにも行き着かない」と険しい表情で語る。続けて「彼らは自らの権力維持に汲々(きゅうきゅう)として、医療制度、税制改革、移民問題について気に掛けていない」と憤った。

 こうした感情を煽(あお)るようにトランプ氏はこの日の演説で「極左の民主党と失敗したワシントンのエスタブリッシュメントが皆さんの票を消して(前回大統領)選挙を無効にし、民主主義をひっくり返そうとしている」と訴えた。

 アメリカン大学のジェームズ・サーバー教授は、トランプ支持者について、本紙に「ワシントンのエリートは助けにならなかったが、トランプ氏は気に掛けてくれたと感じている」と指摘。このため、「トランプ氏を支持することを固く決め込んでおり、トランプ氏が攻撃を受けるほどより一層支えるようになる」と説明する。

 トランプ大統領を誕生させる原動力となった反エスタブリッシュメント感情は、就任から約3年を経て、さらに大きなうねりとなっている。

(ワシントン・山崎洋介)