展望2020大統領選 「有言実行」で庶民の心掴む

アメリカの選択 展望2020大統領選(1)

 今後4年間の米国の針路を決める大統領選が11月に実施される。破天荒な言動で常に国内外の注目を集めるトランプ氏が再選を果たすのか、それとも民主党が4年ぶりに政権を奪還するのか、米国民の選択を展望する。(ワシントン・山崎洋介)

強固な岩盤支持層「トランプを愛している」

 トランプ米大統領の支持率は就任以来、40%前後に低迷を続けるが、その一方で岩盤とも言われる強固な支持層が存在する。トランプ氏のコアな支持層は何を考えているのか。接戦が予想される東部ペンシルべニア州の州都ハリスバーグ近郊で先月開かれたトランプ氏の集会で、参加者の声を聞いた。

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「トランプ氏を愛している」と言って両手でハートマークを作った元機械整備士のジムさん=昨年12月10日、米ペンシルベニア州

 「アイ・ラブ・ヒム(彼を愛している)」――。記者にトランプ氏について尋ねられると、元機械整備士のジムさん(70)は満面の笑みを浮かべ両手でハートマークを作ってみせた。隣接するメリーランド州から来たジムさんは、「トランプは私の生涯で最高の大統領だ。庶民や自らの手で働いている労働者の力になってくれる。私が望んでいたすべてのことをしてくれた」と熱っぽく語った。

 ジムさんが特に大きな業績だと考えるのは、トランプ政権による大型減税だ。「彼はビジネスマンだ。他人からお金を取ろうとせず、われわれのポケットにお金を残してくれる。これは腐敗している政治家にはできないことだ」と述べ、アウトサイダーから大統領に上り詰めたトランプ氏への親近感を示す。

 一緒に来た妻のベッキーさん(68)もトランプファンだ。「トランプは退役軍人や警察官らを大切にしているのが分かる。それが愛国心を呼び起こしてくれるの」とにこやかに話した。

 この集会には数千人の支持者らが参加した。そのうち十数人から話を聞いたが、多くの人が示したのは、ワシントンのエスタブリッシュメント(既得権益層)による「政治の腐敗」への不満だ。こうした既存政治家らは、自らの地位や利益を守ることに必死で、有権者のことを気に掛けないとの不信感がこうした支持者の間に根強い。

 その一方、トランプ氏は大統領に就任して以来、厳しい反対に遭いながらも国境の壁建設や大型減税などさまざまな公約を実行に移した。こうした姿が、現場で汗を流す労働者や庶民のために闘う力強い味方と映っている。

 会場入り口にできた行列の近くで話を聞いたショーン・ブラックさん(52)は、「トランプは他のどの大統領もしなかったことを成し遂げた」とその実行力を高く評価する。ニュージャージー州で塗装業を営むショーンさんの下には今、さばき切れないほどの仕事が来ているという。「みんなのポケットに金が増えたからだ。家の塗装や改築もそうだが、新車を買ったりレストランで外食したりしているよ」と、好調な経済を実感している様子だ。

 この日、トランプ氏は演説で、製造業の成長や失業率の低下、メキシコ、カナダとの新たな貿易協定の締結に向けた合意などさまざまな成果を並べた。その上で、「今までの政治家はワシントンに行った後、何もしなかった。しかし、それらの政治家とは異なり、私は約束を守る」と胸を張った。

 ステージの前で見ていたジェニファー・ウォルスターさん(40)は演説の後、「民主党や他の人が阻止しようとしても、トランプは言ったことを必ず実現する。それは彼自身のためではなく、私たちや国のためにしてくれると本当に感じるのよ」と興奮冷めやらぬ様子で語った。

 トランプ氏は就任以来、相次ぐ暴言やスキャンダルで各方面から強い反発を招きつつも、公約実現を通して確実に支持層の心をつかんでいる。