ロシア、北極海航路から外国船締め出しか
ロシアが事実上、航行許認可の権限を持っている北極海航路からの外国船締め出しを狙っている。同国議会は、エネルギー・運送業界の強化のため、戦略的に重要な北極海航路の外国船の航行を禁止することを検討中だ。
ロシアのプーチン大統領はこのほど開かれた会合で、北極海航路での貨物船の航行をロシアの船舶だけに認める案について話し合ったことが明らかになった。
ロシアのタス通信によると、プーチン氏は「この措置によって海運量は増え、国内の海運業界は強化され、船舶を更新する機会も増える。法案が現在、下院で審議されており、間もなく承認されると思う」と語った。
この保護主義的な発言に、海運・貿易アナリストらは警戒を強め、この措置は違法であり、北極海の石油・ガス開発に長期的に悪影響を及ぼすと警鐘を鳴らしている。
北極海航路は、欧州から太平洋への最短航路であり、ロシアの北極・極東地域を通過する。この航路を通れば、東南アジアから欧州への所要日数は約9日短縮され、従来のスエズ運河やパナマ運河を通る航路のほぼ半分になる。
また、北極海には大量の化石燃料が眠っている。埋蔵量は、石油数十億バレル、天然ガス数百億立方㍍に上るとみられている。
独占によって短期的にはロシアに資金が流れ込む。しかし、アナリストらは、長期的に地域を開発するには、大規模な石油・天然ガスの産出と輸送が必要と主張、このような遠隔地で航行を制限することにはリスクが伴い、地域の開発への関与を手控える国も出てくるだろうと警告する。
さらに、化石燃料の価格は低下傾向にあり、コストの高い北極海の原油・天然ガスの産出に、リスクを冒して取り組もうというエネルギー企業はそれほど多くないとの分析もある。
また、ロシアが航路を独占すれば、貿易をめぐって国際的な反発を招く可能性もあるという。米国など、北極海航路をロシアが事実上支配していることに異議を唱えている国もある。
(ワシントン・タイムズ特約)