エジプトテロ IS系組織か、死者305人に
「異端」敵視、モスク襲う
エジプト東部シナイ半島北部のモスク(イスラム礼拝所)で起きた24日のテロについて、同国検察当局は声明で、死者は子供27人を含む305人、負傷者は128人に達したことを明らかにした。事件を受けてシシ大統領は演説し、治安回復に向けたテロ対策強化と報復を宣言した。しかし、国内各地でテロは続いており、テロとの戦いの一層の泥沼化は避けられない。
シシ政権 拠点空爆、報復を宣言
検察によると、モスクを襲撃したのは25~30人で、過激派組織「イスラム国」(IS)の黒い旗を掲げていたという。シナイ半島ではISに忠誠を誓う「ISシナイ州」が軍や警察を狙ったテロを繰り返している。
犯行声明は出ていないものの、IS系組織による犯行の可能性が高まった。
エジプト軍は24日、襲撃を実行した武装集団の拠点とされる半島内の山岳地帯を空爆し、襲撃に使用された車両数台と、武器弾薬が保管されていたアジトを破壊した。
シシ大統領はテレビ演説で、全土で3日間喪に服すと発表するとともに、「軍と警察は、容赦のない実力行使で報復し、治安を回復させる」と誓った。
エジプトでは首都カイロや、同国第2の都市アレクサンドリア、上エジプト地方で、キリスト教会などを狙ったテロが発生してきたが、このところ治安機関を標的としたテロが増加しているという。
襲撃されたモスクはスーフィーと呼ばれるイスラム神秘主義者が多く集まる場所とされている。スーフィーは、聖者信仰などが偶像崇拝とみられることがあり、ISは「異端」として、機関誌などで攻撃も辞さない姿勢を見せていた。
エジプトでは、モルシ前政権誕生の土台となったイスラム主義集団「ムスリム同胞団」で、武装闘争を正当化する若者の集団「ハスム運動」が勢力を拡大しているとされ、今回の計画的犯行の背後に、武装集団間の連携があるのではとの見方もある。
シシ政権はかつて、ISによるテロの準備・訓練拠点と見なす隣国リビアへの空爆を実施した。
しかし、その後も武器や戦闘員のエジプトへの流入は続いているとされ、強硬姿勢が必ずしもテロの抑制につながっているわけではない。
(カイロ鈴木眞吉)