【社説】香港立法会選 民主派排除の茶番を許すな


香港立法会(議会)選の票を投じる林鄭月娥行政長官=19日午前(時事)

 香港立法会(議会、定数90)選挙が行われ、親中派の「圧勝」が確定した。過去の立法会選で3~4割の議席を維持してきた民主派は、1997年の香港返還後初めて選挙によってゼロとなった。背景には、中国による民主派排除がある。強権を振りかざして香港の民主主義を踏みにじる中国主導の選挙を、認めることは到底できない。

 中国主導で選挙制度変更

 立法会選は昨年9月に予定されていたが、2019年11月の区議会選で民主派が8割超の議席を獲得し、警戒を強めた香港政府が新型コロナウイルス対策を理由に延期した。

 さらに今年5月、中国の全国人民代表大会(全人代)常務委員会の主導で選挙制度を大幅に変更し、立法会議員などの候補者が「愛国者」かどうかを事前審査する「資格審査委員会」を新設。立候補には親中派主体の「選挙委員会」の選挙委員10人の推薦も必要で、民主派出馬は極めて困難な状況となった。

 このような選挙は茶番にほかならない。中国共産党政権が民主主義と相いれないことが改めて示されたと言える。

 過去の選挙で活躍してきた影響力のある民主活動家は、多くが収監されるか海外に拠点を移している。主要民主派政党は今回、候補者擁立を見送った。「多様性のある選挙」を演出したい中国、香港政府のお膳立てで出馬した十数人の自称民主派と中間派はほとんど落選し、親中派の圧勝となった。

 民意が反映されやすい直接選挙枠は、従来の35から20に縮小された。直接選挙枠の投票率が16年の前回選挙から30ポイント近く下がって過去最低の30・2%にとどまったことは、有権者の不満がいかに大きいかを表していると言えよう。

 親中派の圧勝で、立法会は全人代と同様に政府の決定を追認する機関となる。香港の「中国化」が加速することになろう。中国による統制を強める国家安全維持法(国安法)の施行や民主派を排除する選挙制度の変更によって、香港の高度な自治を保障する「一国二制度」は完全に骨抜きにされた。

 一国二制度は1984年の英中共同声明に盛り込まれた国際公約である。公約を無視し、自分に都合よく香港を支配しようとする中国の姿勢は断じて容認できない。

 香港の民主活動家で英国在住の羅冠聡氏は「香港市民は選挙に正統性を与えてはならない。無視してほしい」と棄権を呼び掛けていた。日本や米国をはじめとする民主主義国家は、民主化を求める香港市民と連帯し、中国への圧力を強めるべきだ。

 対中包囲網を強化せよ

 中国の強権支配が進むのは香港だけではない。中国・新疆ウイグル自治区では100万人以上のウイグル族を収容所で拘束し、チベット自治区や内モンゴル自治区でも少数民族固有の文化や言語を奪おうとしている。

 来年2月の北京冬季五輪をめぐっては、米国や英国、オーストラリア、カナダが中国の人権問題を理由に政府高官らを派遣しない「外交ボイコット」を表明し、日本も閣僚派遣を見送る方針だ。対中包囲網の強化が求められる。