【上昇気流】NHKスペシャル「中国新世紀 第5回“多民族国家”の葛藤」


ボータン地区ロブ県内の強制収容所(日本ウイグル協会提供)

 NHKスペシャル「中国新世紀 第5回“多民族国家”の葛藤」は、中国で進行中のウイグル人ジェノサイド(大量殺戮〈さつりく〉)の実態に迫る衝撃的なものだった。ウイグルへの弾圧はさまざまに伝えられているが、映像の持つ直接性には迫力がある。

 「イスラム教は中華民族の宗教ではない。おまえたちはイスラム教に毒されている」。そんな言葉を繰り返し浴びせる。強制収容所に入れられた女性が証言する洗脳教育の実態だ。

 住民監視の実態についても、当局にインストールさせられたアプリが、どのように監視カメラや検問に繋(つな)がって機能しているかなどを明らかにしている。

 驚いたのは「親戚制度」といって、共産党幹部と親戚関係を結び交流する制度。実際は党幹部が家庭の中に入り込んで、コーランや礼拝マットがあるかなどをチェックしている。

 中国当局の魔手は日本にいるウイグル人にも向けられている。本国にいる家族を人質にし、人権活動を止(や)めさせようとしたり、組織の情報を得ようとしたりしているのだ。長く連絡の取れなかった本国の兄から突然連絡がありテレビ電話で話していると、途中で中国当局の男性が現れ、日本のウイグル団体のことをあれこれ聞いてくる。協力しなければ家族の安全が保障されない。その一部始終が映像で流れた。

 中国のジェノサイドは巧妙で、ナチスのホロコースト以上に悪辣(あくらつ)だ。そんな国で開催される五輪に外交使節を送るなど、とんでもないことだ。