元テロリストとの蜜月 過激な左翼教育を推進

再考 オバマの世界観(20)

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テロリスト時代のビル・エアーズ氏(左下)と妻バーナーディン・ドーン氏(右下)の指名手配写真(ウィキメディア・コモンズより)

 「私は爆弾を仕掛けたことを後悔していない。我々はやり足りなかったと感じている」

 2001年9月11日付のニューヨーク・タイムズ紙に、こう語るある男の特集記事が掲載された。その男の名はビル・エアーズ氏。ベトナム戦争当時、米連邦議会や国防総省、警察署などで数々の爆破事件を起こした極左過激組織「ウェザー・アンダーグラウンド」の主要メンバーだった人物である。

 冒頭の発言が示すように、エアーズ氏は死傷者を出すテロに関与してきた過去を全く反省していない。それどころか、自叙伝「逃亡の日々」で、「私が今日、爆弾を仕掛けることは想像できない。だが、その可能性を完全に捨て去ることも想像できない」と、再びテロを起こすかもしれないと述べている。

 同紙にエアーズ氏の記事が掲載されたその日、国際テロ組織アルカイダによる同時テロが発生したのは、偶然とはいえ、不気味な巡り合わせである。

 オバマ大統領はシカゴ時代、この危険な極左テロリストと緊密な関係を築いていた。08年大統領選でエアーズ氏とのつながりが問題になった時、オバマ陣営は「ただの近所の住人」と主張したが、これは事実と全く異なる。

 まず、オバマ氏は政治家としてのキャリアをエアーズ氏の自宅でスタートさせている。1995年、アリス・パルマー・イリノイ州上院議員の後継者として州上院選に出馬することになったオバマ氏を関係者に紹介するため、自宅でレセプションを開いたのがエアーズ氏だった。

 また、エアーズ氏は同年、「シカゴ・アネンバーグ・チャレンジ(CAC)」という教育改革に取り組む財団を設立し、同氏の支援でオバマ氏は初代理事長に選ばれる。エアーズ氏がオバマ氏を信頼していなければ、財団運営を任せることはないだろう。

 連邦政府の訴追を逃れ、テロリストからイリノイ大学の教育学教授に転身したエアーズ氏は、暴力ではなく学校教育を通じ、過激な社会変革の実現を目指していた。保守派評論家スタンリー・カーツ氏によると、CACは「エアーズ氏の過激主義を実践」するための組織で、オバマ氏はその理事長として、生徒や父兄に反体制的価値観を植え付ける政治色の濃い教育プログラムに資金を流し続けたという。

 オバマ氏はさらに、1994年から8年間理事を務めた「ウッズ基金」という財団を通じ、エアーズ氏や同氏の妻でウェザー・アンダーグラウンドの同志バーナーディン・ドーン氏のプロジェクトに資金を提供した。99年には、エアーズ氏をウッズ基金の理事に迎え入れている。

 オバマ氏とエアーズ氏は二つの財団で緊密に連携しながら、過激な左翼教育を推進したのである。

 一方で、オバマ氏はウッズ基金の理事として、コミュニティー・オーガナイザーへの助成金を大幅に増額させ、特に、2008年大統領選で大規模な不正有権者登録活動が問題になった左翼団体「即時改革のためのコミュニティー組織協会(ACORN)」に多額の資金を供給した。

 「(エアーズ氏が)40年前に憎むべき行為に関与した時、私は8歳だった」

 オバマ氏は08年4月、民主党予備選の討論会でこう語り、エアーズ氏が関わったテロとは無関係だと強調した。確かにそれは事実だが、危険な過去を持つ人物と緊密な関係を持つことに何のためらいも抱かなかったのは、オバマ氏がその過激な左翼思想に同調していたからに他ならない。

(ワシントン・早川俊行)