ACORNの闇(中) 大規模な不正有権者登録
再考 オバマの世界観(16)
2008年米大統領選で、過激な左翼団体「即時改革のためのコミュニティー組織協会(ACORN)」の無法ぶりを世に知らしめたのが、有権者登録活動での大規模かつ組織的な不正行為だ。ACORNは21州で約130万人を新たに有権者登録させたと発表したが、架空の人物の申請や重複登録などさまざまな不正が発覚し、各州の当局が捜査に乗り出す事態に発展した。
例えば、ネバダ州ラスベガスの選管当局によると、ACORNが提出した有権者登録の48%が不正だった。同州ではまた、プロフットボールチームの選手名が記載された登録用紙が見つかるなどしている。
このほか、▽コネティカット州の7歳の少女が27歳の年齢で登録申請された▽フロリダ州では「ミッキーマウス」と名前が記された登録用紙が見つかった▽ルイジアナ州では多くの登録用紙が電話帳を見て書かれていた▽オハイオ州の男性は1人で73枚の登録用紙に署名し、報酬として現金とタバコを受け取った▽ウィスコンシン州では執行猶予・仮釈放中の犯罪者を雇い、違法に有権者登録業務に就かせていた――という。
ACORNと密接な関係にあるオバマ氏を大統領にするため、運動員たちがなりふり構わずやっていた実態が浮かび上がる。
オバマ氏にはACORNの有権者登録活動に直接関わってきた過去がある。ハーバード大学ロースクールを終えてシカゴに戻ったオバマ氏は、1992年に「プロジェクト・ボート」という有権者登録運動の責任者になるが、これはACORNと連携して行われた取り組みだった。
また、95年にACORNがイリノイ州に有権者登録を容易にする連邦法の実施を求めて起こした訴訟では、オバマ氏が弁護人を務め、勝訴している。
左翼活動家たちが有権者登録に力を入れる理由は何か。一つは、民主党左派候補を支援することだ。有権者登録運動は表向き無党派を装っているが、民主党支持層の低所得者・マイノリティーに登録を呼び掛けるため、事実上、民主党候補の応援に他ならない。オバマ氏が指揮した92年のプロジェクト・ボートも、同党上院議員候補を当選させることが目的だった。
もう一つは、民主党を左傾化させることだ。保守派評論家スタンリー・カーツ氏によると、左翼活動家たちは①民主党を低所得者とマイノリティーで溢(あふ)れさせることで、同党からビジネス界を遠ざけ、階級で分断された二大政党制へと再編する②労働者階級に支配された民主党は必然的に社会主義を志向していく――との戦略に基づき、それを実現する具体的な手段として有権者登録運動を重視しているという。
オバマ氏は大統領選で、95年の訴訟がACORNとの「唯一の関わり」と主張したが、これは真っ赤なウソだ。オバマ氏にとって最初の選挙となった96年のイリノイ州上院議員選以来、ACORNは常に歩兵部隊となってオバマ氏を全面支援してきたのだ。
ACORNシカゴ支部のリーダーだったトニ・フォークス氏は、左翼活動家情報誌「ソーシャル・ポリシー」に、オバマ氏がACORNの幹部教育を担当したことなど長く深いつながりを例示しながら、「我々がオバマ氏の選挙運動で活発なボランティアになるのは当然だった。彼が連邦上院選に出馬する時までに、我々は古い友人になっていた」と書いている。
2008年大統領選でも、オバマ陣営はACORNのコンサルタント会社「シチズンズ・サービシーズ」に約83万㌦を支払った。連邦選挙委員会(FEC)には当初、舞台・音響・照明代と報告していたが、実際は有権者を投票所に動員する活動費だった。
(ワシントン・早川俊行)






