大学時代の知人の証言 「マルクス主義を百パーセント信奉」
再考 オバマの世界観(4)
オバマ米大統領は1979年、故郷ハワイを離れ、リベラルアーツ・カレッジの名門校であるロサンゼルスのオクシデンタル大学に入学する。
当時、オバマ氏がどのような学生だったのか、ほとんど知られていない。だが、2010年、大学時代のオバマ氏の政治観、世界観について貴重な証言をする人物が現れた。元ウィリアムズ大学助教授のジョン・ドリュー氏だ。
オバマ氏に4回会ったことがあるというドリュー氏は、こう断言する。
「オバマ氏は熱烈なマルクス・レーニン主義者だった」――。
ドリュー氏が初めてオバマ氏と会ったのは、1980年12月のことだ。オクシデンタル大を卒業し、コーネル大大学院に進学していたドリュー氏が、カリフォルニア州にある恋人の実家を訪れていた時だった。
ドリュー氏は現在、共和党支持者だが、オクシデンタル大時代はマルクス主義学生組織を設立するなど、バリバリの左翼活動家だった。2歳年下の恋人も、その学生組織で出会ったマルクス主義者だった。
大学の授業でドリュー氏の恋人と知り合ったオバマ氏は、クリスマス休暇にルームメートのパキスタン人学生とともに彼女に会いに来たのだった。
「彼らはわれわれの側よ」。高級なBMWに乗ってやって来たオバマ氏たちを、恋人はドリュー氏にこう紹介したという。「われわれの側」とは、マルクス主義を信奉する同志という意味だ。
ドリュー氏はオバマ氏らと長時間、政治について議論を交わす。その時のオバマ氏の発言について、ドリュー氏はこう述懐する。
「労働者階級が支配階級を打倒し、米国に社会主義者のユートピアを確立する革命が間もなく起きる、彼はそう信じていた」
オバマ氏は自らの役割を来るべき革命を指導する「前衛」と見なしていたほか、米国を敵視し、ソ連を擁護する発言もあったという。
大学院に進学し、社会主義の理念を支持しつつも、現実的な視点を持つようになっていたドリュー氏は、先進国で労働者革命が起きると考えるのは幻想だと指摘すると、オバマ氏は「それはおかしい!」と色をなして反論。ドリュー氏は、オバマ氏がマルクス主義の革命理論を百パーセント受け入れていることを確信した。
オバマ氏が1995年に出版した自叙伝「私の父からの夢」(邦題「マイ・ドリーム」)にも、大学時代、マルクス主義に傾倒していたことをにおわせる記述がある。それによると、「友人を慎重に選んでいた」というオバマ氏は、マルクス主義の教授らと積極的に付き合っていた。ドリュー氏によると、オクシデンタル大は当時、「南カリフォルニアのモスクワ」と呼ばれるほどリベラル色が強く、マルクス主義を信奉する教授が多くいたという。
冷戦時代、学生がマルクス主義にのめり込むのは珍しいことではない。だが、オバマ氏は他の学生とは明らかに異なっていた。オバマ氏がドリュー氏と議論を交わしたのは入学後、1年余りしかたっていない19歳の時だったが、マルクス主義を幅広く研究していたドリュー氏を驚かせるほど左翼思想に精通していた。ドリュー氏は言う。
「ここまで急進的な大学2年生は極めて珍しい」
これは何を意味するか。オバマ氏は大学に入学する以前、つまり、ハワイ時代に既に過激な左翼思想に染まっていた可能性が極めて高い。
(ワシントン・早川俊行)