憲法記念日 令和に国柄を愛し守る条文を


 令和の時代となって最初の憲法記念日を迎えた。昭和、平成を経て72年の歳月を数える日本国憲法の第1章「天皇」の条文の定めにより即位されるのは、新天皇陛下で2代目、「日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」としてお務めをされるのは3代目となる。天皇と国民が共にある国柄を末永く守りたい。

相変わらず低調な審査会

 令和元年を迎える深夜、全国各地でカウントダウンが行われ、大勢の人々が歓声を上げた。その多くは平成生まれの若者たちである。日本の歴史の時間軸の中で、皇位継承の節目である改元を初めて体験したことに感動したのだろう。このようなわが国の歴史・伝統に裏打ちされた国柄は時代を超えて受け継がれている。

 しかし、現憲法にはこのような国柄が述べられていない。現憲法の前文は、第2次世界大戦の戦勝国と敗戦国に分かれた1945年当時だけの情勢を反映したものだ。日本国民が再び戦争を起こさないと決意する詫(わ)び証文のような文脈であり、戦争を知らない戦後昭和世代の子・孫たちが担う令和の時代には響き方も鈍くなるだろう。

 自民党は「日本国憲法改正草案」で前文の改正案も示しており、「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される」と述べた上で、先の大戦などに触れて平和主義を打ち出している。

 わが国の歴史は古いものであり、皇位継承と改元は日本人だけでなく海外からも注目された。このような国柄に国民は愛着を持っており、各世論調査でも皇室と元号への好感度はとても高く、大多数の人々がその存続を支持している。日本の国柄を愛し、どのような国を目指すかを示すための前文論議が必要ではないか。自民党だけでなく各党に望みたい。

 一方、今国会でも衆参の憲法審査会が、野党の抵抗で相変わらず低調であることは残念だ。これまで国会での憲法論議や調査を通じて、現憲法には見直すべき点が多々あると指摘されている。憲法に関しては党利党略ではなく、国の最高法規をどうするかという立法府最高の仕事として気概を持ち、審議を進めていくべきだ。

 与野党の対立点が9条であることも議論が平行線になりがちな理由でもある。占領期に連合国軍総司令部が憲法を起草したため、戦力の保持も交戦権も否定する9条が盛り込まれた。しかし、独立回復して54年には自衛隊が発足し、海外では「軍」として待遇されている。

 最も矛盾した9条の条文を正すことが憲法改正の筆頭に挙がるべきだ。国連憲章では国の固有の権利として個別的および集団的自衛権を認めており、改憲を党是とする自民党はじめ憲法改正の1丁目1番地として取り組んでほしい。

 国民投票実施に期待

 平成時代には改憲手続きの法整備がなされた。これを土台に、令和の憲法論議を与野党が闊達(かったつ)に行い、必要とあれば改憲発議をして国民投票を実施していくことを期待したい。